臨床薬理の進歩 No.44
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女女女女表1 患者背景Case年齢,歳性別BMI,kg/m21234結  果主訴逆流感嘔吐咳嗽逆流感,呑酸なし併存疾患全身性強皮症、肺高血圧症、脳腫瘍脂質異常症、高尿酸血症、骨粗鬆症高血圧、脂質異常症図2 Case 1全身性強皮症による食道無蠕動を認めた。食道狭窄によりHRMカテーテルは下部食道を通過しなかった。UES, upper esophageal sphincter.24-hour multichannel intraluminal impedance-pH monitor MII-pH検査はZepHr® Impedance/pH Reflux Monitoring System(Diversatek Inc.、Milwaukee、WI、USA)のインピーダンスpHカテーテルを用い、専用ソフトウェアであるZvu® Functional GI Softwareで解析した。インピーダンスpHカテーテルには胃内pHと食道内pHを測定できるように2個のpHセンサーが設置されている。カテーテルを経鼻的に挿入し、食道内pHセンサーは下部食道括約筋の上縁から5 cm口側に留置した。下部食道括約筋の位置はHRM解析により決定した。ボノプラザン20 mg/dayを8週間以上継続内服した状態で検査を行った。症状と逆流との相関性はsymptom index(SI)13)、symptom sensitivity index(SSI)14)およびsymptom association probability(SAP)15)を用いて評価した。腹腔鏡下逆流防止手術 逆流防止手術が有用と判断された患者には、腹腔鏡下Toupet噴門形成術を行った。Toupet噴門形成術は既報に準じて行い、食道裂孔の縫縮後、胃穹窿部をEGJに背側から非全周性(1/2~2/3周性)にwrappingした16)。 研究期間中にボノプラザン抵抗性GERDの定義を満たした患者は4/68例(5.9%)と少なかった。表1に4例の①患者背景、②HRM検査結果、③MII-pH検査結果、④臨床経過を示す。19.025.632.620.470716249Case 1①患者背景: 70歳、女性。逆流感を主訴としていた。10年前から全身性強皮症に対し前医にて内科的治療が行われていた。重症食道炎(ロスアンゼルス分類grade D)を認め、ボノプラザン20 mg/dayを継続投与されていたが改善せず、食道狭窄を起こしていた。②HRM(図2): 食道狭窄によりHRMカテーテルは下部食道を通過しなかったが、食道体部蠕動のみを評価し、食道無蠕動と診断した。③MII-pH検査(ボノプラザン内服下): X線透視下にインピーダンスpHカテーテルを胃内まで留置した。MII-pH検査では胃内酸曝露時間率は0%であり、ボノプラザンによる酸分泌抑制効果は十分であった。しかしながら、食道粘膜の傷害度の指標であるmean nocturnal baseline impedance(MNBI)ロサンゼルス分類Grade DGrade C食道炎なし食道炎なし136嚥下無蠕動食道体部5 sUES

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