臨床薬理の進歩 No.44
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図3 Case 2食道胃接合部にLESとCDの分離(double-high pressure zone)を認め、食道裂孔ヘルニアと診断した。食道体部蠕動は微弱であり、シカゴ分類上は食道無蠕動であった。CD, crural diaphragm; LES, lower esophageal sphincter; UES, upper esophageal sphincter.は253 Ω(正常値≥2292 Ω)ときわめて低く、十二指腸液(胆汁や膵液)などの非酸逆流に起因する重症難治性食道炎が疑われた。なお、インピーダンス解析による非酸逆流回数は検査中3回のみであったが、MNBI値が異常低値のために液体逆流に伴うインピーダンスの低下が起こり難く、逆流回数が過小評価されたと考えられる。④臨床経過: 重症難治性食道炎に対し腹腔鏡下Toupet噴門形成術を施行した。術後に逆流感は消失したが、食道炎はロスアンゼルス分類grade Dのまま改善しなかった。その後、全身性強皮症の病状は緩徐に増悪し、胃蠕動の低下が明らかとなった。Case 2①患者背景: 71歳、女性。5年前から胸やけが出現し、来院2カ月前より嘔吐を繰り返すようになった。既往に特記すべき事項はない。ボノプラザン20mg/dayの継続投与により胸やけは改善されたが、上部消化管内視鏡検査では滑脱型食道裂孔ヘルニアとロサンゼルス分類grade Cの食道炎を認め、ボノプラザン抵抗性GERDと診断した。ボノプラザン抵抗性GERD患者の酸分泌状態の評価②HRM(図3): EGJにdouble-high pressure zoneを認め、食道裂孔ヘルニアと診断した。ヘルニアのサイズは2.1 cmであり、また胸腔と腹腔の生理学的な境界線を示すpressure inversion pointはLESより尾側に位置していたことから、EGJ morphologyは胃食道逆流を最も誘発しやすいとされるtype Ⅲa/type Cと判断された。食道体部蠕動波は微弱であり、食道蠕動圧の指標であるDCIは全嚥下で低値(<500 mmHg-cm-s)を示したことから、食道無蠕動と診断した。③MII-pH検査(ボノプラザン内服下): 胃内酸曝露時間率は27.6%(日中16.6%、就寝中45.5%)であり、ボノプラザンによる酸分泌抑制効果は十分であった。MNBIは1873 Ωとやや低値であり食道粘膜傷害が示唆されたが、食道内酸曝露時間率は0.1%(正常値<4.2%)、DeMeesterスコアは1.0(正常値<14.72)と異常酸逆流は認めず、またインピーダンス測定では液体逆流は15回のみ(正常値<73回)であった。検査中には逆流症状の訴えはなかった。④臨床経過: 腹腔鏡下Toupet噴門形成術を施行した。術後はボノプラザンの内服は不要となり、手術3カ月後に行った上部消化管内視鏡検査では食道炎は認めなかった。また、手術3カ月後のMII-pH検査では胃内酸曝露時間率92.9%と胃酸分泌時間は正常範囲に戻っていたが、食道内酸曝露時間率0.2%、DeMeesterスコア1.2と異常逆流は認めなかった。Case 3①患者背景: 62歳、女性。5年前から長時間持続する咳嗽発作に悩まされていた。頻回の咳嗽によって肋骨を疲労骨折したことがあり、また臥位になると咳嗽が誘発されるため座位で睡眠をとる必要があり、生活に支障を来していた。前医での精査にて呼吸器疾患は否定され、原因疾患としてGERDが疑われた。しかしながら、ボノプラザン20 mg/dayの投与では症状は改善せず、上部消化管内視鏡検査でも食道裂孔ヘルニアや食道炎を認めなかった。137137嚥下微弱蠕動波食道体部UESCDCD5 sLESCD

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