臨床薬理の進歩 No.44
154/235

結  論謝  辞利益相反障害はdisorders of gut‐brain interaction(腸脳相関)とも呼ばれる。COVID-19パンデミック下の欧米において上部消化管症状を訴える患者が一時的に急上昇したが、ストレス状況下での心理的・認知的要因による症状発現を反映した現象と考えられる21)。こうした逆流様症状(reflux-like symptoms)の治療法は確立しておらず、“Treating the Patient, Not the Disease”の全人的なアプローチが重要とされる21)。 本研究の結果を解釈する際、次の3点に留意が必要である。第1に、ボノプラザン休薬でのMII-pH検査データがなく、胃内酸分泌状態のbaselineが不明である。また、酸分泌抑制効果の指標となる胃内酸曝露時間率の基準値は未だ確立していないこともデータ解釈において注意する必要がある。第2に、ボノプラザン抵抗性GERDの定義を満たした症例数が少なく、統計学的検証を行うことができなかった。将来的には多施設共同研究によってサンプル数を増やすことが望ましい。第3に、24時間食道内ビリルビンモニタリング検査を行っていないことが挙げられる。本研究ではボノプラザンは強力な酸分泌抑制効果を示し、食道炎の原因が十二指腸液の逆流である可能性が示唆されたが、実際に十二指腸液であるかを証明するためには、24時間食道内ビリルビンモニタリングが必要である。 ボノプラザン抵抗性GERD患者においても、ボノプラザンは十分に胃酸分泌を抑制していることが確認された。ボノプラザン抵抗性食道炎の原因としては、十二指腸液の逆流と食道運動機能障害に伴う逆流液のクリアランス低下が考えられた。また、食道知覚過敏症と機能性食道障害がボノプラザン抵抗性GERD症状の原因となり得ることが確認された。 2022年10月 第30回JDDW(福岡)、パネルディスカッション14『ガイドライン改訂後のGERD診療について』において、ボノプラザン診療について総合討論が行われ、研究結果の一部分を公表した。 本研究を遂行するにあたり、研究助成をいただきました公益財団法人臨床薬理研究振興財団に深謝申し上げます。 本研究に関し、開示すべき利益相反はありません。140

元のページ  ../index.html#154

このブックを見る