*1 KOGANEMARU SHIGEHIRO *2 FUCHIGAMI HIROBUMI *3 YAMASHITA DAIKI *4 SUNAKAWA HIRONORI *5 KAWAZOE AKIHITO *6 NAKAMURA YOSHIAKI *7 KUBOKI YASUTOSHI *8 SHITARA KOHEI *9 YANO TOMONORI *10 DOI TOSHIHIKO *11 YASUNAGA MASAHIRO はじめに要 旨 近年の分子生物学的手法など基盤技術の著しい進歩により多くの薬剤が開発されて上市されている。しかしながら、新薬の開発において有効性を示すことは容易ではなく、特にがん領域においては他疾患と比較し新薬の成功確率が低く、いまだ満足のいくものではない。がん領域において薬効が得られにくい原因の1つとして、がん組織の不均一背景 腫瘍内における不均一性は薬剤耐性を引き起こすため、創薬における重要な課題である。腫瘍内の低酸素領域はがん幹細胞や腫瘍微小環境の存在により、機能的に不均一性を生じうる。従来、遺伝子解析を中心に解析が行われてきたが、ドラッグデリバリーに基づく解析は未だ不十分である。目的・方法 進行胃がん患者にトリフルリジン・チピラシル塩酸塩(FTD/TPI)を投与後、酸素飽和度イメージング内視鏡(OXEI)を用いて腫瘍内の酸素飽和度領域別に取り分け、質量分析でFTD濃度を評価した。結果 解析10例においてDNA中に取り込まれたFTD濃度は、低酸素領域6.67±3.42 µmol/g DNA、高酸素領域10.53±4.81 µmol/g DNAであり、高酸素領域で有意に高値を示した(p<0.05)。また、増悪症例では、高酸素領域と低酸素領域のFTD濃度比が大きい傾向を示した。結論 OXEIを用いることによりin vivoで正確な低酸素領域の生検が可能となり、従来困難であったヒト組織レベルでのPK/PD解析による薬剤耐性機序の解明につながる可能性が示唆された。国立がん研究センター東病院 先端医療科国立がん研究センター先端医療開発センター(EPOC)新薬開発分野国立がん研究センター東病院 消化管内視鏡科 同 上国立がん研究センター東病院 消化管内科 同 上国立がん研究センター東病院 先端医療科国立がん研究センター東病院 消化管内科国立がん研究センター東病院 消化管内視鏡科国立がん研究センター東病院 先端医療科国立がん研究センター先端医療開発センター(EPOC)新薬開発分野性がある。特に固形がん組織においては、腫瘍細胞と線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞、細胞外マトリックスなどの様々な腫瘍微小環境成分で構成されているため、血液腫瘍と比較し、不均一性が高いとされている。また、固形がん組織における血管の異常や血液の供給不足による低酸素領域の存在は、低酸素誘導因子(HIF-1)、CAIX、GLUT1、VEGFなど低酸素応答遺伝子の応答へとつながり、分子学的変化による機能変化をもたらKey words:組織PK/PD、酸素飽和度イメージング内視鏡(OXEI)、FTD/TPI、低酸素、ドラッグデリバリー143久保木 恭利*7 設楽 紘平*8 矢野 友規*9 土井 俊彦*10 安永 正浩*11薬剤耐性克服のための組織中PK/PD評価システムの開発Development of a tissue PK/PD evaluation system for overcoming drug resistance小金丸 茂博*1 渕上 弥史*2 山下 大生*3 砂川 弘憲*4 川添 彬人*5 中村 能章*6
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