臨床薬理の進歩 No.44
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方  法TLS発現および成熟度を評価し、さらにTLSの構成細胞についても解析した。我々の知る限り、本研究は世界で初めて食道癌におけるTLSが予後およびICI治療効果予測に有用であることを示した。本研究は、Br J Cancer 2023 Apr 4. doi: 10.1038/s41416-023-02235-9 に発表している13)。 大阪大学および大阪国際がんセンターの2施設で2001〜2017年に術前無治療で根治術を施行した計316例の食道癌切除標本を対象とした。別コホートとして2014〜2017年に2次治療以降にPD-1抗体治療(240 mg/body i.v. 2週間毎)した再発食道癌34例の抗PD-1抗体治療以前の手術時の切除標本を解析に用いた。治療効果判定はResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors (RECIST), version 1.1に基づいた。パラフィンブロックは腫瘍最深部の連続切片スライドを評価に使用した。本研究は大阪大学IRBで承認(No.20056)されており、手術前に全患者から病理組織を作成することに同意取得した。免疫組織染色 全スライドはキシレンで脱パラフィン後、クエン酸抗原賦活化バッファー(pH 6.0)で110 ℃15分間圧力鍋で賦活化した。蒸留水で洗浄後、スライドは3% H2O2 20分間処理後、0.1% Triton X-100/PBSで3回洗浄し1.5% serum solution/PBSでブロッキングした。1次抗体4 ℃で1晩インキュベートし、2次抗体は室温20分でインキュベートした。検出はavidin-biotinylated enzyme complex kit (Vectastain ABC Kit、PK6100、Vector)と3’-3- diaminobenzidine(DAB)substrate(Wako、Japan)を用いた。ヘマトキシリンでカウンターステイン施行した。使用した1次抗体: CD21(2G9、NCL-L-CD21-2G9、Leica Biosystems、Germany)、CD23(SP23、ab16702、Abcam、UK)使用した2次抗体: Horse anti-mouse IgG(BA-2000、Vector、USA)Goat anti-rabbit IgG(BA-1000、Vector、USA)Serum blocking solution: horse(S-2000、Vector、USA)、goat(S-1000、Vector、USA)。腫瘍辺縁TLS発現および成熟度の評価法 スライドの全腫瘍領域を観察し、TLS定量評価のため腫瘍包巣の辺縁から1000 µm幅の領域を「腫瘍辺縁」と定義しその領域のリンパ球集合体を同定しHE染色でその数を測定した。デジタル顕微鏡システム(BZ-X710、Keyence、Japan)および解析ソフトウェア(BZ-H3A、Keyence、Japan)を用いて腫瘍辺縁の面積を測定しTLS数からTLS密度(per mm2)を計測した。TLS成熟度については既報に基づいて、連続切片を用いたHE染色およびCD21(濾胞樹状細胞)、CD23(胚中心)の免疫組織染色(IHC)を用いて形態学的および分子発現の違いから次の3群に分類した。①早期TLS(E-TLS):曖昧なリンパ球集簇でCD21およびCD23発現がどちらも陰性のもの、②1次卵胞様TLS(PFL-TLS):円形/楕円形の小型リンパ球クラスターでCD21発現陽性かつCD23発現陰性のもの、③2次卵胞様TLS(SFL-TLS):明確な細胞質をもった大型リンパ球からなり胚中心の存在するものでCD21およびCD23発現が陽性のもの。なおTLS密度と成熟度は症例ごとに評価・分類した。多重蛍光免疫染色によるTLS構成細胞の評価 腫瘍切片の準備過程は前述のIHCと同様に行った。抗原賦活には高pH賦活溶液(DAKO)を用いた。使用した1次抗体:anti-CD1c(mouse monoclonal、clone OTI2F4、Abcam、Cambridge、UK)、anti-CD4(mouse monoclonal、clone 4B12、4B12、Invitrogen、Waltham、MA)、anti-CD8(mouse monoclonal、clone C8/144b、DAKO)、anti-CD19(mouse monoclonal、clone LE-CD19、Invitrogen)、anti-CD21(rabbit monoclonal、clone SP32、Abcam)、anti-CD138 (mouse monoclonal、clone MI15、DAKO)。1次抗体とhorseradish peroxidase(HRP)で標識された2次抗体(EnVision plus、DAKO、Glostrup、Denmark)を153

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