臨床薬理の進歩 No.44
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結  果反応させ、抗原ストリッピングには Immunoactive Retrieval Buffer(pH6、Matsunami Glass、Osaka、Japan)を用い、Opal fluorophore reagents(Akoya Biosciences、Marlboro、MA)を用いたTyramide signal amplification(TSA法)にて行った2)。CD1c、CD4、CD8、CD19、CD21、CD138にはOpal 520、Opal 540、Opal 570、Opal 620、Opal 650、Opal 690をそれぞれ用い、DAPIカウンター染色にはSpectral DAPI solution(Akoya Biosciences)を用いた2)。定量的画像化解析 各TLSの共局在化シグナルを検出し、自動病理イメージングシステム(Vectra 3.0、Perkin Elmer、USA)を用いて組織画像(669×500 µm in size)をマルチスペクトル画像へと取り込んだ。蛍光陽性細胞数については解析ソフトウェア(InForm、Perkin Elmer、USA)によるプログラムされた細胞測定アルゴリズムにて計測した2)。CD1c陽性樹状細胞、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、CD19陽性B細胞、CD21陽性濾胞樹状細胞、CD138陽性形質細胞それぞれの発現パターンを評価し、すべての細胞数測定データを取得したうえで1視野あたりの各シグナルの密度や割合を定量的に測定した。統計解析 臨床病理学因子との相関の解析にはchi-square testまたはFisher’s exact testを用いた。連続変数は中央値(range)で表し、解析にはMann-Whitney U testを用いた。生存解析については、生存期間分布にはKaplan-Meier法を、比較にはlog rank testを、hazard ratio(HR)や単/多変量解析にはCox proportional hazard modelを用いた。単変量解析で統計学的に有意であった因子を多変量解析で検討した。p < 0.05を統計学的有意とし統計解析にはJMP Pro software(version 16.2.0、SAS Institute Inc.)を用いた。食道癌における腫瘍辺縁TLSの発現と成熟度 腫瘍関連TLSの発現と局在に関して、ほとんどのTLSは腫瘍辺縁領域に存在し腫瘍内のリンパ球クラスターや集合体としての存在はごく稀であった(図1A)。またTLSは隣接する正常食道上皮にはほぼ存在しなかったことから、以後の解析は腫瘍辺縁領域におけるTLS密度および成熟度について定量的評価を行うこととした。TLS成熟度評価としてCD21陽性細胞はPFL-TLSおよびSFL-TLSの内部に存在しE-TLSには存在しなかった。CD23陽性細胞はSFL-TLSのみの内部に胚中心として認めた(図1B)。腫瘍辺縁TLSは全体の90.8%にみられ、成熟度別(未成熟から成熟の順に)ではE-/PFL-/SFL-TLSはそれぞれ 74.7、54.1、64.9%の症例に認めた。続いて各症例の腫瘍辺縁TLS密度と成熟度を評価した(図1C)。全症例をTLS密度で2群(カットオフ値:中央値0.325 /mm2)に分けると、TLS high群はTLS low群と比較して未成熟TLS(E-TLS)割合が少なく、逆に成熟TLS(PFL-/SFL-TLS)割合が多かった(図1D)。またpTやpStageの進行度が進むにつれ、腫瘍辺縁TLS密度は低下した(図1E、F)。TLS発現と臨床病理学的因子との相関 表1はTLS密度による2群での患者背景についての比較を示す。TLS high群はTLS low群と比較して腫瘍ステージが浅かった[pT2-4(29.1 vs 68.3%、p < 0.0001)、pN1-3(38.0 vs 56.3%、p = 0.0016)、pStage Ⅲ/Ⅳ(49.4 vs 75.3%、p < 0.0001)、リンパ管侵襲陽性(50.6 vs 66.5%、p = 0.0060)、静脈侵襲陽性(34.2 vs 63.3%、p < 0.0001)]。特筆すべきことに血清栄養指標に関して、TLS high群はTLS low群に比べて明らかに各栄養指標が良好であった[末梢血好中球数(3058 vs 3674 /mm3、p < 0.0001)、血清アルブミン(4.0 vs 3.9、p = 0.0059)、NLR(1.89 vs 2.58、p < 0.0001)、PNI(48.3 vs 45.8、p = 0.013)]これらはおそらく全身の免疫反応を反映しているものと思われる。末梢血リンパ球数はTLS high群で高い傾向にあったが統計学的有意差は認めなかった(1577 vs 1452 /mm3、p = 0.097)。154

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