臨床薬理の進歩 No.44
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*1 IMAI TOSHIMI *2 AIZAWA KENICHI はじめに要   旨 狭心症や心筋梗塞、脳梗塞等からなる動脈硬化性心血管疾患により、全世界で年間1780万例が死亡している1)。本邦では、心疾患および脳血管疾患が死因の20%程度を占めており、なかでも虚血性心疾患や脳梗塞の占める割合が大きい。健康寿命の延伸を目指す上で動脈硬化性疾患の早期診断および早期介入を可能とするバイオマーカーの同定は喫緊の課題である。心血管疾患のリスク因子として脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙、加齢、男性、慢性腎臓病などが挙げられるが、中でも脂質異常症はプラーク形成を伴う粥状動脈硬化を惹起し、狭心症、急性心筋梗塞の原因となりうることから、特に重要なリスク因子である。一方で、スタチンによる 動脈硬化性疾患による死亡率は依然として高く、心臓病については、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患が増加している。したがって、冠動脈疾患の発症予防・再発予防は喫緊の課題といえる。血清総コレステロール値やLDL コレステロール値が冠動脈疾患および死亡と相関し、スタチンによる脂質低下療法の心血管イベント抑制効果が報告されているが、その効果は20~40%程度にとどまる。脂質異常症治療の残余リスクとして、高感度CRP高値、高non-HDL コレステロール血症、冠動脈カルシウムスコアなど様々な指標が検討されてきたが、冠動脈疾患発症予測能は十分とはいえない。したがって、心血管イベントの新規バイオマーカーが必要である。現在、脂質異常症を対象にスタチンによるLDLコレステロールの厳格管理が心血管イベントに及ぼす影響を検討した本邦の臨床試験の残余血液検体を使用し、トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)の心血管イベント予測能を検証中である。治療群割り付け後24か月の時点では、血漿TMAO高値の心血管イベント予測能は実証されなかったが(p=0.0927)、より長期における心血管イベント予測能を検証する予定である。自治医科大学医学部薬理学講座臨床薬理学部門        同   上心血管イベント抑制効果は 20~40%程度にとどまる2, 3)。残余リスクとして、高感度CRP高値4)、高non-HDL コレステロール血症5)、冠動脈カルシウムスコア6)など様々な指標が報告されてきたが、冠動脈疾患発症予測能は十分とはいえない。したがって、脂質異常症をはじめとする古典的リスク因子とは独立した、新規の心血管イベントバイオマーカーが必要である。トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)は食物中のホスファチジルコリンが腸内細菌叢によりトリメチルアミンへ代謝され、腸管を経て肝臓のフラビン含有モノオキシゲナーゼにより生成される7)。他に、赤肉などに含有されているL-carnitineも腸内細菌叢による修飾を受けてTMAOへ代謝される8)。近年、TMAOは多彩なメカニズムを介して動脈硬化を強力に促進することKey words:トリメチルアミン-N-オキシド、脂質異常症、スタチン、心血管イベント165今井 利美*1  相澤 健一*2脂質低下療法中の心血管イベント発症予測因子の探索Exploring predictors of cardiovascular events during lipid-lowering therapy

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