臨床薬理の進歩 No.44
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図1 EMPATHY studyの研究概要観察期治療(スタチン1剤)観察期(4~8週間)対象と方法ランダム割り付け通常脂質管理群(スタチン1剤)目標 LDL-C: 100 mg/dL 以上、120 mg/dL 未満強化脂質管理群(スタチン1剤)目標 LDL-C: 70 mg/dL 未満研究治療期(2年~最長5.5年)が示されている。マクロファージの泡沫化7)、NLRP3インフラマソーム活性化9)、IL-1などの炎症性サイトカインの誘導およびIL-10などの抗炎症性サイトカインの抑制10)、胆汁酸合成抑制およびコレステロール逆転送の抑制7, 11, 12)、血小板活性亢進/血栓形成促進13, 14)が報告されている。 TMAOは、心血管イベントや心不全のリスク因子であることが報告されている15, 16)。興味深いことに、急性心不全症例を対象とした検討では、血漿TMAO値(pTMAO)およびその予後予測能が人種/民族間で異なることが示されている17)。そこで我々は、本邦で実施されたスタチン介入による心血管イベント抑制効果を検証した多施設共同臨床試験The standard versus intEnsive statin therapy for hypercholesteroleMic Patients with diAbetic retinopaTHY(EMPATHY)study18)の残余血液検体を用いてpTMAOを測定し、冠動脈疾患の既往のない脂質異常症を対象にTMAOの心血管イベント予測能を検討した。心血管イベント一次予防におけるTMAOの臨床的意義を明らかにする。 EMPATHY study18)は、糖尿病網膜症および高コレステロール血症を有し、かつ冠動脈疾患の既往がない30歳以上の2型糖尿病患者を対象に、スタチン介入強度による心血管イベント発症抑制効果を検証した多施設共同PROBE試験である。対象患者を、通常脂質管理治療群(目標LDLコレステロール:100 mg/dL以上120 mg/dL未満)および強化脂質管理治療群(目標LDLコレステロール:70 mg/dL未満)の2群に1:1で割り付けた(図1)。 EMPATHY studyは自治医科大学倫理審査委員会の承認が得られており(承認番号:臨B14-113)、二次利用の承諾が得られている。本研究は、EMPATHY study本登録時の残余血液検体でpTMAOを測定し得た731例が解析対象であり、自治医科大学倫理審査委員会で審査を受け、2018年6月1日に承認された(承認番号:臨大18-006)。 主要エンドポイントは全死亡または心血管イベント発症である。今回、本登録時の残余血液検体でpTMAOを測定し得た731例が解析対象である。本研究における心血管イベントは、心イベント、脳イベント、および血管イベントとした。心イベントは心筋梗塞、予定されていない入院を要する不安定狭心症、冠動脈血行再建術 (経皮的冠動脈形成術、冠動脈バイパス術)、脳イベントは脳梗塞、脳血行再建術、血管イベントは大動脈・末梢動脈疾患(大動脈解離、腸間膜動脈血栓症、閉塞性動脈硬化症による重症下肢虚血・潰瘍の発現,血行再建術または指切断・下肢切断)とした。 本登録時におけるpTMAOの中央値で高値群および低値群の2群に分け、連続変数についてはMann-Whitney U検定、カテゴリー変数については166

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