臨床薬理の進歩 No.44
199/235

写真2 モニュメント・バレーでの一コマ 意外に思われるかもしれませんが、アメリカでの生活にかかるお金は日本と大差がありません。食費は日本よりも安いくらいです。肉類やビールは日本よりも明らかに安いですし、野菜も日本と同じくらいの値段です。家賃は25万から30万円程度で高いですが、これは日本と同様、都市の規模などによるのだと思います。一方で、日本と大きく異なるのは外食の値段です。外食は感覚的には日本の2倍程度です。例えば、ラーメンを3人で食べて5千円以上かかります。とは言え、これは材料費に比べて人件費が非常に高いことを意味しており、少なくとも日本よりはよく経済が回っているようでした。 留学といえば、やはり日本で暮らしていると行くことができない場所への旅行だと思います。私はパンデミックがあったため旅行する場所も限られていましたが、それでも多くの国立公園を訪れました。なかでもモニュメント・バレーは素晴らしかったです(写真2)。 一方で、個人的に生活面で最も苦労したのは言語です。高校時代の英語の成績は悪くなかったし、海外学会でオーラル発表をしたこともあったので、英語に苦手意識はありませんでしたが(得意でもなかったですが)、アメリカで生活して初めて言語が違うとこんなに苦労するのかと思い知りました。何か物を購入するときやホテルを予約するときなどは、電話対応の相手も非常に丁寧なので問題ないのです。ところが、商品の発送ミスや保険のキャンセルなどこちらがクレームを伝えるときが困るのです。クレームを入れる場合、相手は私の英語をなんとか聞いてあげようという意識が全然なく、思うように自分の主張を伝えることができません。結局、私はだんだん電話でクレームをいれるのが嫌になり、多少のことなら泣き寝入りしてしまうことが増えてしまいました。ただこういった経験は私だけではなく、多くの日本人研究者が言語で苦労しているようです。ところが、日本人研究者でも子供の頃に親の仕事でアメリカに住んでいた、という方々は英語がとても上手です。つまり、これは日本の英語教育が悪いのだと思います。中学、高校時代にあれだけ英語の勉強に時間を費やしたのに虚しく感じます。同じアジアでも韓国人の英語は上手です。それもまた悔しい限りです。この面からも、お子様がいる方は子供のためにも留学をおすすめします。 さて、私が留学した研究室はNIHの1部門、NationalInstituteofAllergyandInfectiousDiseases(NIAID)の中にある研究室の一つです。留学先のボスであるMichaelJLenardo(写真3)は34歳でラボを開き、NatureやCell、Scienceと179アメリカでの生活Michael Lenardo’s labについて

元のページ  ../index.html#199

このブックを見る