臨床薬理の進歩 No.44
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写真4 閉鎖されたNIHの出入り口の一つ写真5 無料で配布されたコロナ抗原検査キットになりました。屋内でもマスクを外し、いつの間にかコロナの感染者数を気にする人もいなくなりました。この頃の日本はまだ緊急事態宣言とまん延防止等重点措置を出したり引っ込めたりしていたので、留学生活最後の1年間はアメリカのほうが過ごしやすかったのではないかな、と思っています。 日本に帰国して2ヶ月あまりが経とうとしていますが、ワクチン接種率が広まっているにも関わらず未だにコロナウイルスにアレルギーを持っている政府やマスコミを見ると少し寂しく、アメリカを懐かしく思います。 私は、これまでヒト免疫および疾患にフォーカスして研究を行ってきました。そして、基礎研究と臨床の両方に従事しながら、患者の生体内で何が起きているかを正確に知ることこそが臨床免疫、臨床薬理で最も重要だと考えてきました。そこで、留学先ではヒトクリニカルゲノミクスを学び、全ゲノム解析や遺伝子編集技術を用いて新規遺伝子の機能解析や新たな病気の発見を行い、「ヒトの病気は遺伝と環境によってその境界が決定されている」という理論がヒトの病気を読み解く鍵であるという思いに至っています。幸い留学先では素晴らしい同僚にも恵まれ、助けもあって1)KuboS,FritzJM,Raquer-McKayHM,KatariaR,Vujkovic-CvijinI,Al-ShaibiA,etal.CongenitaliRHOM2deficiencycausesADAM17dysfunctionandenvironmentallydirectedimmunodysregulatorydisease.Nat Immunol2022;23:75-85.2)KuboS,KatariaR,YaoY,GabrielskiJQ,ZhengL,MarkowitzTE,etal.EarlyBcellfactor4modulatesFAS-mediatedapoptosisandpromotescytotoxicfunctioninhumanimmunecells.Proc Natl Acad Sci U S A2022;119:e2208522119.3)YaoY,KimG,ShaferS,ChenZ,KuboS,JiY,etal.Mucussialylationdeterminesintestinalhost-commensalhomeostasis.Cell2022;185:1172-88.e28.複数の報告を出すことができました1〜3)。研究内容についてはここでは詳しく述べませんが、興味のある方は論文をご笑覧くださいますと幸いです。 この度は、臨床薬理研究振興財団の多大なるご支援により充実した留学生活を送ることができましたこと、改めて御礼申し上げます。世界に負けない研究を日本でもできるようにより一層精進し、後進の育成とともに臨床薬理学の発展に寄与したいと思っています。今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。181研究内容おわりに

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