臨床薬理の進歩 No.44
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182 「臨床薬理の進歩 NO.44」には、2018~2020年度に採択された研究課題に関する論文20編および海外留学助成金報告2編を掲載しました。本誌の編集に際しては、毎年4月ごろに編集委員会が開催されます。中国武漢で発生した新型肺炎(COVID-19)のケースが報告されたのが2019年、2020年の春には我が国を含め多くの国々の人々の生活に多大な影響が及びました。その影響により、2020年の編集会議は初めてのオンライン開催となり、2021年、2022年の会議もオンラインでの会議が続きました。2023年4月、我が国でおこった第8波も収まりつつある中、本誌の編集会議はコロナ禍以降初めて対面で開催ができました。本年度編集会議が開かれた土曜日午後の東京駅周辺はコロナ禍以前の活気を取り戻しており、日常の生活が戻ってきたことを実感しました。臨床、研究、あるいは教育においても様々な制限がありましたが、2023年は、それも完全に元に戻って欲しいと切に願っています。 「臨床薬理の進歩 NO.44」に掲載された論文には、コロナ禍において企画、実施された研究が多く含まれています。今回掲載された論文は、科学的基盤に立脚する合理的薬物治療学の確立を目指した臨床研究はもちろんですが、基礎研究であってもその結果を臨床応用へとつないでいくトランスレーショナルな取り組みも多く掲載されています。 人類が経験したことのない大規模なパンデミック下においても、絶え間なく研究を継続されてきた研究者の皆様、そしてそれを支援していただいた公益財団法人臨床薬理研究振興財団に対して心から敬意を表します。大賞選考に当たっては、編集委員が十分に議論し、臨床薬理学的視点から、薬物有害反応出現の危険因子に関わるゲノム薬理学と薬剤疫学の融合研究、肺高血圧の新規治療法に関わるターゲット探索、重症薬疹のゲノム情報による発症機序の解明、がん精密診断をめざした修飾核酸測定法の開発、術中脳脊髄腫瘍のリアルタイム蛍光診断の確立、が選ばれました。改めて臨床薬理学が、裾野の広い学問領域であることを実感しました。臨床薬理学者に加えて、基礎研究者、臨床薬剤師、臨床医、あるいは異分野の専門家が幅広い連携を進めていくことで、ベッドサイドの薬理学である臨床薬理学がこれからも大きく発展にしていくことを願っています。2023年5月上村 尚人あ と が き

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