臨床薬理の進歩 No.44
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8ppppn/itcA-β2HA-FAP<0.0001=0.0174- +- +=0.0365=0.0365- +- +- +考  察メディカルメガバンク3552人、京都大学HGVD 1208人)および病的バリアントデータベース(論文から悉皆的に収集したHGMD、米国中心のClinVar)を対象に、ミスセンス変異の病的意義を評価するための予測プログラムを用いて解析し、既存の判定プログラムの結果を統合したCADDスコア> 30の変異を抽出したところ、酵素活性中心とは異なる部位に2か所、有力なミスセンス変異Gln184Arg(551A>G)、Arg85Cys(253C>T)を同定した(図5a)。患者背景としてはどちらの変異についても既存の治療薬への反応が悪い難治例であった。PAF-AH2のcatalytic triadはSer237、Asp260、His315であるため、ミスセンス変異は酵素活性中心とも離れている。実際、コンピューターシミュレーションを用いて、これらの変異によるPAF-AH2の構造変化を調べたところ、変異部位から少し離れた、酵素活性中心とも異なる箇所に蛋白構造のダイナミックな変化が確認された(図5b)。 次に、それぞれのミスセンス変異を導入した変異PAF-AH2蛋白を培養細胞に発現ベクターを用いて図5 PAHに関与するヒトPafah2遺伝子における2つの病的変異a. ヒトPafah2遺伝子における2つの病原性変異候補の模式図。b. PAF-AH2 p.R85C 変異(左の黄色)、p.Q184R変異(右の黄色)、およびネイティブ型(青)の分子シミュレーション。矢印:ネイティブ構造と比較して、各バリアントモデルで変化したコンフォメーションを示す。c. pcDNAベクターを使用しヒトPafah2バリアントを発現したHEK293細胞におけるPAF-AH2蛋白のウェスタンブロッティング。平均値 ± SEM。強制的に産生させたところ、2つの変異蛋白のどちらについても正常配列の蛋白と比べ、mRNAの発現レベルに変化はないが、産生蛋白量の著しい減少がみられた(図5c)。遺伝子変異によるアミノ酸配列の変化によって、変異蛋白質自体の不安定性が増し分解が進んでいることが示唆されたため、蛋白分解機構を阻害するMG132を加えたところ、減少していた変異PAF-AH2はいずれもほぼ正常量に回復した(図5c)。以上から、ユビキチンプロテアソーム系を介した蛋白量の制御機構の存在が示唆された。 我々は、肥満細胞のPAF-AH2によって産生されるω3エポキシドが、肺動脈の血管リモデリングを調節することで、肺高血圧症の進展を抑えることを明らかにした。 興味深いことに、本研究におけるω3エポキシドによる抗線維化作用と肺高血圧の改善は、ω3脂肪酸- +- +- +- +- +

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