臨床薬理の進歩 No.44
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方  法研究倫理かねてから炎症性疾患の診療における重要な課題であり、GCに代わる抗炎症作用を有し、GCの使用量を減量することができる薬剤の登場が待ち望まれている。 我々は、THP-1細胞におけるNF-κBレポーター細胞を利用してGCと同様のNF-κB活性抑制動態を示す新規リード化合物を見出した4)。具体的には、ワクチンアジュバント開発を目的に実施された2つのHigh-throughput screening(HTS)からのデータ5)を再解析し、15万以上の化合物ライブラリーに含まれる1824種類の候補化合物を同定した。これらの1824化合物を、LPS刺激によるNF-κB活性、CXCL8産生抑制、Toxicityに基づき、51種に限定し、それを11の化学型に分類した。このうち、1H-pyrazolo[3,4 d]pyrimidin-4-amine誘導体(INH #1)と、bis-aryl urea誘導体 (INH #3)は、THP-1と関節リウマチ滑膜線維芽細胞(RA-FLS)において、Tumor Necrosis Factor α(TNFα)によって誘導されるIL-6およびCXCL8の産生を抑制した。更に、INH #1はRA-FLSにおいて、TNFα刺激下で、デキサメタゾン(DEX)と相乗作用を示し、サイトカイン、ケモカイン産生を抑制することを確認した。 我々は更に、リード化合物と共通の基本骨格を有する化合物が多く化合物ライブラリー中に含まれ、スクリーニング時のデータを利用可能であることから、Structure activity relationship(SAR)解析を行うことで効率的にリード化合物の構造改変を行い、より効果的な抗炎症作用を持つ誘導体の創薬が可能であると着想した。また、薬剤の炎症抑制のメカニズムと標的分子を同定することで、臨床的にも安全性の高い薬剤の開発が可能と考えた。これらの薬剤は、GCに代わるまたはGCの使用量を減量できる新規薬剤となりうる可能性を秘める。 以上より、本研究はHTSを通して同定したリード化合物を、本邦で再合成し、その誘導体を合成展開すること、RA-FLS、THP-1での薬理効果を検証し、最も高い効果が得られた化合物の炎症モデルマウスへの有効性、安全性を検討することを目的として実施した。リード化合物と誘導体の作成、コントロール化合物 東京医科歯科大学生体材料工学研究所の薬化学分野、生命有機化学分野と共同研究に取り組み、それぞれでINH #1とその誘導体INH #1A-#1C、INH #3とその誘導体INH #3A-#3Gを合成した。INH #3の誘導体のうち、INH #3Bは東京化成工業から購入した(C0031)。IKKβ阻害薬である5-(4-Fluorophenyl)-2-ureidothiophene-3-carboxamide (UTC)をコントロール化合物として使用した。すべての化合物はDimethyl sulfoxide(DMSO)(富士フイルム和光純薬)に溶解し、−20 ℃で暗所保存とした。細胞培養 RA-FLSは関節置換術を受けた関節リウマチ患者の滑膜から継代樹立した。具体的には滑膜組織を小断片に裁断し、2 mg/mLの4型コラーゲン(Worthington)、0.8 mg/mLのジスパーゼ、0.1 mg/mLのDNase I(Roche)を含むDulbecco’s modified Eagle Roche’s medium(DMEM)で37 ℃、15分処理する。その後培養液を置換することを4回実施し、回収された細胞を10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum; FBS、Gemini Bio)を含むDMEMにて15 cm 培養皿を用いて継代培養する。すべての実験は増殖期のRA-FLS(5-11継代目)で実施した。対象患者は米国リウマチ学会の分類基準を満たしており、本研究に参加する同意を得た。THP-1はATCCより購入し、10% FBSを含むRoswell Park Memorial Institute(RPMI)にて75 cm2フラスコを用いて継代培養した。すべての培養液には終濃度1 %でペニシリン/ストレプトマイシンを添加した。 本研究は東京医科歯科大学生命倫理研究センター12

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