考 察特にIgG2a/2bサブクラスは補体活性化能が高く、関節軟骨のCⅡと免疫複合体を形成して、補体活性化を介して関節炎を惹起する。関節炎の出現時にはTNFαも産生される7)。我々はリード化合物が、CIAモデルにおける関節炎発症に抑制的に働くかを検討するため、2回目免疫の直前から12日間INH #1を連日投与し、関節炎スコアを評価した。観察期間中に死亡個体は認めなかった。INH #1は4000 nmoL/日の投与群ではday 29以降で関節炎スコアが有意に低下していた(図6a)。更に、4000 nmoL/日群では関節炎の組織スコアも軽減していた(図6b-6c)。脾臓細胞をCⅡで刺激すると、INH #1 4000 nmoL/日投与群で細胞増殖の抑制がみられ、INF-γ産生も抑制されていた(図7a-7c)。しかし、INH #1は抗CⅡ抗体の産生は抑制しなかった(図7d)。THP-1におけるINH #1とDEXの協調作用によるNF-κB抑制 THP-1においてINH #1とGCが相互作用することで、NF-κB pathwayやAP-1 pathway関連分子にどのような影響を与えているかを評価した(図8)。DEX 1 nMにINH #1を加え、NF-κB活性化と抑制に関連する蛋白の発現を確認した。DEX 1 nMでは、NF-κBのリン酸を十分抑制しなかったが、INH #1を加えることで、NF-κBのリン酸化抑制効果がみられた。さらに、その効果はINH #1単独に比べても強いものであった。UTCはIKKβ阻害薬であり、IκBαのdegradationを抑制する。INH #1単独では、IκBαの分解を阻害できず、DEXとの協調作用でもその発現は変わらなかった。IRAK-MとA20は、NF-κB活性に対して抑制的に働く蛋白である。これらは、INH #1単独で誘導されているが、DEXとの協調作用は明らかではなかった。 我々がHigh-thoughtput screeningで見出したNF-κB抑制性化合物のうち、1H-pyrazolo[3,4 d]pyrimidin-4-amine誘導体(INH #1)とbis-aryl urea誘導体(INH #3)を再合成し、誘導体を展開した。このうち、INH #1はRA-FLSに加えてTHP-1においてもGCと相乗作用を示した。更に、INH #1は2つの異なる炎症モデルマウスにおいて、抗炎症効果を示すことを証明した。一方で、INH #3はRA-FLSではサイトカイン・ケモカインを抑制したが、炎症モデルマウスでは効果を示さなかった。 我々のこれまでの検討で、INH #1はTNFα刺激によってRA-FLSから産生されるサイトカインをDEXと相乗的に抑制した。今回、THP-1を用いた検討でも、LPS刺激によるIL-6とCXCL8/IL-8の産生を抑制した。さらにINH #1をDEXと協調させることで、NF-κBのリン酸化を効率的に抑制した。THP-1において、DEXがサイトカイン産生を抑制する機序として、一部の細胞でIκBαの誘導することや、AP1関連遺伝子、特にTNFαプロモーター領域のc-Jun/ATF-2の複合体がNF-κBのアンタゴニスティックにTNFα産生を抑制が報告されている12)。今回の我々のINH #1を協調的に用いて結果では、このメカニズムを解き明かすのに十分なデータが得られなかった。 マウスにLPSを投与すると、Toll like-receptor(TLR)活性によりTNFα、IL-6、IL-1が上昇する13)。INH #1は、LSP投与1.5時間後に誘導されるTNFα産生を抑制した。これはINH #1は生体内に投与後、速やかに吸収され、比較的早期のNF-κBの転写活性に抑制的に効果を発揮することが考えられる。 CIAにおいても、INH #1は関節炎の重症化を抑制した。CIAでは血中の炎症メディエーターの中心はIL-1であり、TNFα阻害により関節炎は改善するものの、それは関節炎発症早期に治療を行った時に限られる8)。今回、我々の化合物も、2回目のエマルジョンの免疫に先立ち、投与を開始した。結果として、関節炎の重症化が抑制され、INH #1による関節炎重症化抑制効果を示した。他のサイトカインでの検討は行っていないが、TNFαの産生を抑制したことが一因である可能性を考える。CIAでは、19
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