臨床薬理の進歩 No.44
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対象と方法ヒト iPS細胞内胚葉細胞肝前駆細胞DayActivin ABMP4FGF4図1 肝細胞分化誘導方法1-34-8 9-13 14-Takayama K, et al. Hepatol Commun, 2017; 12: 1058-69. 4)より改変HGFOsM肝細胞21-変異が重なるホモFHが報告されている1〜3)。本邦で検出されるPCSK9遺伝子変異は、海外で報告されているLDLR分解作用の強いPCSK9遺伝子変異と異なり、FHの病態はmildであり、病態への寄与が十分に明らかになっていない。そこで本研究では、ホモARH及び本邦特有のLDLR遺伝子変異にPCSK9遺伝子変異が重なるホモFH患者において病態機序に基づいた効果的な治療薬を開発するために、ホモARH及びホモFH患者由来iPS細胞から作製した肝細胞から病態を再現する病態モデルの構築を試みた。患者由来iPS細胞の樹立 国立循環器病研究センターに通院中のARH患者、LDLR遺伝子変異にPCSK9遺伝子変異の重なるホモFH患者を発端者とする2家系5人について、採血を行い、CiRAプロトコール「エピソーマルベクターを用いた末梢血のiPS細胞樹立方法」に従って末梢血単核球を分離・培養後、大阪大学大学院薬学研究科水口裕之教授のグループにてiPS細胞が樹立された。実験のコントロールとして健康成人由来iPS細胞も作製した。本研究は、国立循環器病研究センター、大阪大学、名古屋大学環境医学研究所にて倫理委員会の承認を得ており、研究対象者からは研究同意を取得している(承認番号:国立循環器病研究センター:M17-056、M24-080、M27-006、大阪大学794:名古屋大学環境医学研究所:390、393、386)。肝細胞分化誘導 大阪大学大学院薬学研究科水口裕之教授らが報告した肝細胞分化誘導方法に従い(図1)4)、iPS細胞から、内胚葉・肝前駆・肝細胞へと分化誘導を行った。作製した肝細胞において、肝細胞分化の指標である培養上清中のアルブミン量をELISAにて定量した。また、作製した肝細胞からRNA抽出及び逆転写反応、細胞抽出液よりウエスタンブロッティングを行い、肝細胞マーカー遺伝子の発現解析及びLDLR及びPCSK9蛋白質の発現確認を行った。BODIPY-LDLの細胞内局在の観察 肝細胞に5 µM lovastatin を添加し、37 ℃24時間インキュベート後に細胞を洗浄し、10 µg/mL BODIPY-LDLを添加し、37 ℃で4時間インキュベートした。細胞を洗浄後、4% PFAで固定し、肝細胞マーカーであるASGPR1(asialoglycoprotein receptor)に対して蛍光免疫染色を実施し、染色像を蛍光顕微鏡にて観察した。統計解析 実験結果は平均値±標準誤差で示した。2群比較については unpaired two-tailed Student’s t-test、3群比較についてはone-way ANOVAもしくはTukey-KramerのHSD検定を行った。46

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