臨床薬理の進歩 No.44
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-+Lovastatin図8 健康成人、ヘテロ及びホモFH患者より樹立したiPS細胞由来肝細胞におけるBODIPY-LDLの取り込み緑:BODIPY-LDL、赤:ASGPR1、青:DAPI健康成人ヘテロ FHホモ FH代謝は健常人よりも亢進していることを報告している6)。このように、ヒト肝細胞におけるLDLR活性に対するLDLRAP1の効果ならびにLDLRAP1の病態生理学的意義を解明することは重要である。現在、家系内で全ゲノム/RNAシークエンス解析を行っており、病態に関連する遺伝子について探索中である。また、細胞内のLDLやLDLRの局在についても評価中である。ヘテロ及びホモARH患者由来iPS細胞から作製した肝細胞のアルブミン分泌量は、ヘテロ及びホモFH患者由来iPS細胞から作製した肝細胞のアルブミン分泌量に比較すると少なかった。肝細胞分化誘導効率がドナー間で異なることが報告されているが8)、ヘテロ及びホモARH患者由来iPS細胞の分化誘導効率についても検討する必要がある。ヘテロ及びホモFH患者から樹立したiPS細胞由来肝細胞の機能評価 我々はLDLR遺伝子変異にPCSK9遺伝子変異の重なるFH患者は、LDLR遺伝子変異のみを有する患者に比較してLDL-コレステロール値が高く、冠動脈疾患のリスクが高いこと、予後が悪いことを報告している2,7)。健康成人由来iPS細胞から作製した肝細胞に比較し、ヘテロFH、ホモFH由来iPS細胞から作製した肝細胞におけるBODIPY-LDLの取り込みは低下していたが、ヘテロFHとホモFH由来iPS細胞から作製した肝細胞においてBODIPY-LDLの取り込みに差は認められなかった。今後はLDLの取り込みの定量的な評価方法について検討していく。ヘテロFHとホモFHの遺伝子型として、LDLR遺伝子変異は同一であり、PCSK9遺伝子変異の有無のみが異なることから、環境要因や別の遺伝要因が加わらない限り、LDLRの発現やLDLの取り込みについて差が認められない可能性もある。現在、家系内でエクソーム解析を行っており、病態に関連する候補遺伝子についても探索している。健康成人由来iPS細胞から作製した肝細胞におけるLovastatin添加時の脂肪滴の大きさはヘテロ及びホモFH患者由来iPS細胞から作製した肝細胞に比較して大きかったことから、各細胞におけるLDL取り込みの違いに加え、脂質合成、蓄積、排出の違いについても明らかにできる可能性がある。51

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