臨床薬理の進歩 No.44
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χ22p表1 妊娠中の抗精神病薬服薬状況と産科的転帰( )は%を示す。服薬状況(継続群・中断群)と産科的転帰の連関を検討するため健常成人群を含めた3群間でχ2検定を行った。*服薬状況と妊娠糖尿病の連関があるかを検討するためにχ2検定を行った。その結果、服薬状況と妊娠糖尿病に有意な連関が認められた(χ2 (2) = 6.944、p = 0.031)。残差分析の結果、妊娠糖尿病の発生率が服薬継続群(30.4%)が健常成人群(9.3%)に比べて有意に高かった(p < 0.05)。結  果服薬継続群(n = 23)16(69.6)7(30.4)21(91.3)2(8.7)22(95.7)1(4.3)21(91.3)2(8.7)中断群健常成人群(n = 86)(n = 15)12(80.0)3(20.0)78(90.7)8(9.3)15(100)0(0.0)82(95.3)4(4.7)14(93.3)1(6.7)82(95.3)4(4.7)14(93.3)1(6.7)83(96.5)3(3.5)df6.9440.031*換算)を用いた7)。解析方法 疾患群のうち、評価時に服薬を継続していたものを、「服薬継続群」、中断していたものを「中断群」とした。「健常成人群」と合わせて3群で各評価項目についてχ2検定を行った。抗精神病薬の用量(CP換算値)が各評価項目に及ぼす影響については、CP量を独立変数、産科的および新生児評価を従属変数としたロジスティック回帰分析を用いた。p値5%未満を統計学的な有意差とした。本研究における統計解析は、SPSS 28(IBM Corporation、Armonk、NY、USA)によって実施された。対象者の内訳 研究対象者は、精神病性障害11名(平均年齢 = 31.0、SD 5.9、最小-最大年齢21-39;初産婦/経産婦 = 9/2)、双極性障害27名(平均年齢 = 31.6、SD5.0、18-40;初産婦/経産婦 = 17/10)、健常成人群86名(平均年齢 = 31.8、SD 4.7、22-42;初産婦/経産婦 = 37/49)であった。疾患群のうち、服薬継続妊娠糖尿病なしあり早産なしあり胎児発育不全なしあり妊娠高血圧症候群なしあり群は23名(平均年齢 = 31.6、SD 4.2、21-39;初産婦/経産婦 = 15/8);中断群15名(平均年齢 = 31.3、SD 6.6、18-40;初産婦/経産婦 = 11/4)であった。抗精神病薬の服薬状況と産科的転帰 表1に示すとおり、妊娠糖尿病の発生率において服薬継続群(30.4%)が健常成人群(9.3%)に比べて有意に高かった(p < 0.05)。その他の項目では有意差は認めなかった。 妊娠糖尿病となった疾患群における分娩時の抗精神病薬の内訳は、アセナピン1名(1日用量10 mg)、アリピプラゾール3名(3 mg、4 mg、6 mg)、オランザピン1名(7.5 mg)、クエチアピン3名(25 mg、75 mg、175 mg)、ブレキシピプラゾール1名(1 mg)抗精神病薬なし4名であった。抗精神病薬の2剤併用が2名おり、それぞれ、アリピプラゾール6 mgとクエチアピン75 mg 1名、アリピプラゾール4 mgとオランザピン7.5 mg 1名であった。妊娠中の抗精神病薬服薬状況と新生児転帰 表2に示すとおり、新生児不適応症候群の発生率が、健常成人群(0.0%)に比べて服薬継続群(21.7%)で有意に高かった(p < 0.05)。その他の項目ではn.s.n.s.n.s.62

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