臨床薬理の進歩 No.44
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表3 妊娠中の抗精神病薬服用量(CP換算値)と産科的転帰略語:CP クロルプロマジン産科的転帰を目的変数、妊娠中の抗精神病薬服用量を説明変数として、ロジスティック回帰分析を行った。Hosmer-Lemeshowの適合度検定の結果、各モデルの当てはまりの良さが示されなかった。妊娠時CP妊娠糖尿病早産胎児発育不全妊娠高血圧症候群妊娠26週以降CP妊娠糖尿病早産胎児発育不全妊娠高血圧症候群分娩時CP妊娠糖尿病早産胎児発育不全妊娠高血圧症候群オッズ比0.9990.9990.9741.0010.9981.000 1.006 0.9970.9981.000 1.008 0.99795%信頼区間0.994–1.0030.993–1.0060.974–1.0270.997-1.0060.994–1.0030.994–1.0070.998–1.0140.987-1.0070.993–1.0030.994–1.0061.000–1.0160.987-1.007結  語pSらのシステマティックレビューとメタ解析においてもリスク増加が示されており本研究知見と一致している8)。しかし、本研究は少数例ではあるが、特記すべきは抗精神病薬の中でも特に高血糖・体重増加リスクがあり糖尿病禁忌とされているオランザピン、クエチアピンだけでなくアリピプラゾールなど体重増加を避けたい患者に投与する薬剤でも見られたこと、さらには4割(4名)が抗精神病薬中断にも関わらず妊娠糖尿病となったことである。FOWPs studyを進め、生活習慣や肥満の程度についてより緻密な検討が必要と考える。 新生児における妊婦の抗精神病薬服用の安全性について、特に抗精神病薬継続と新生児不適応症候群は従来から報告されているリスクであり予想できた結果と考える9)。新生児不適応症候群は抗精神病薬に限らず母体が向精神薬を服用している際、およそ30%以上で発症し得ることを考える9)。アプガースコアなど児の長期予後に影響する評価項目が有意にならなかったが、本研究のサンプルサイズが小さく、今後FOWPs studyを進め詳細な解析をすべきと考える。 妊娠中の抗精神病薬服用量の産科的・新生児転帰への影響は、新生児不適応症候群以外に有意差が見られなかった。高用量の抗精神病薬を要する妊婦の周産期管理は、新生児不適応症候群に備えてNICU等新生児ケア設備の整った医療機関が望ましいことが本研究で示唆された。一方で、抗てんかん薬に代表されるように10)、一般的に妊娠中の向精神薬服用は用量依存性に催奇形性のリスク増加となること知られているが、本研究では催奇形性は評価していないが、今後FOWPs studyを進めて検証していくべきと考える。 研究限界として、併用する向精神薬の影響を無視できないこと、中間解析のためサンプルサイズが少なく、さらに各症例の詳細な生活情報が解析時に盛り込めなかった点が挙げられる。今後、抗精神病薬を必要とする妊娠女性の診療に寄与できるエビデンスを提供できるようにFOWPs studyのエントリーを完了させフォローアップしていく予定である。 FOWPs studyの中間解析結果ではあるが、抗精神n.s.n.s.n.s.n.s.n.s.n.s.n.s.n.s.n.s.n.s.n.s.n.s.64

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