臨床薬理の進歩 No.44
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結  果を用いて実施した。造影剤静脈内投与後、脳腫瘍全体をカバーする3D Fast Field Echo Quickシーケンスを用いて行った。造影剤ガドブトロール(Gadovist; Bayer、Osaka、Japan、0.05 mL/kg体重)は、駆動式自動注入器(ソニックショットGX;根本杏林堂)により1 mL/sの速度でボーラス静注し、その後、生理食塩液30 mLを1 mL/sの速度でボーラス静注した。Dynamic Contrast Enhanced(DCE)perfusion MRIの画像の後処理は、専用の後処理ソフト(Olea Sphere V3.0、Olea Medical、Vitrea Workstation V7.1、キヤノンメディカルシステムズ)を用いて実施した。 画像解析は、FLOW800(Carl Zeiss)、Image J(NIH Image、Bethesda、MD、USA)を用いて行った。蛍光発光や造影MRIの輝度を測定は、region of interest(ROI)を5箇所設定し、輝度の測定値の平均値を使用した。蛍光発光値は相対値である、正常脳の発光値を基準として、腫瘍の発光値をSignal to Background Ratio(SBR)と定義した。またMRIもガドリニウム(Gd)造影にて、正常脳白質の値を基準として、Gd造影の輝度値をRatio of Gadolinium-enhanced T1 Tumor Signal to Normal Brain(T1BR)と定義して、解析を行った。 また、Toftsらによって導入された薬物動態モデルを用いて、血管内から血管外への体積移動定数Ktrans(/min)、血管外から血管内へのKep(=Ktrans/Ve)(/min)、血管外細胞外空間の容積Ve(mL/100 mL of tissue)および分画血漿量Vp(mL/100 mL of tissue)を算出できる。Toftsら 拡張モデル4)で提案された2コンパートメント薬物動態モデルは、血管と組織を独立したコンパートメントと見なすことを主張している。この2コンパートメントモデルに基づき、造影剤の組織移行速度定数(Ktrans)、血管外の細胞外空間の体積比(Ve)、血管内成分の体積比(Vp)をパラメータとして、目的部位と参照部位での造影剤濃度の関係から各パラメータを算出した。このDCE perfusion MRIの2コンパートメント薬物動態モデルに基づいて、perfusion analysis法を用いて、Permeability parameter5)を算出することにした。 統計解析はJMP 14.1.0(SAS Institute Inc.、Cary、NC、USA)を用いて行った。一変量解析はカテゴリカル変数の比較にはカイ二乗またはフィッシャーの正確検定を、連続変数にはunpaired t検定またはMann-Whitney順位和検定および単回帰分析を適用した。統計的有意性はp<0.05とした。転移性脳腫瘍 5.0 mg/kgを手術24時間前に点滴投与するSWIG法を転移性脳腫瘍10例(Kinevo 5例、Visionsense 5例)に行った。詳細は、肺癌4、大腸癌3、胃癌1、尿路癌1、胆嚢癌1である。腫瘍局在は小脳7、小脳2、皮膚〜硬膜1であった。すべての腫瘍に術前Gd強調MRIを施行し、すべての腫瘍がGdで造影された。平均腫瘍体積は17563±14669 mm3、最大平均腫瘍径は45.0±14.1 mmであった。手術中に転移性脳腫瘍からの近赤外蛍光を全例で確認することができた。腫瘍切除の基本戦略は、腫瘍の外周を剥離し、その後、腫瘍腔に侵入することなく断端で一括切除することである。 蛍光発光はすべての患者で腫瘍に限局していることが確認された。顕微鏡を介してSWIGを行い、腫瘍からの蛍光発光の存在を確認した。すべての患者において、転移性脳腫瘍は、周囲の脳実質よりも強い近赤外線蛍光を生じた。脳表面からの平均SBRは1.8±1.3であったが、腫瘍自体からのSBRは3.4±1.8であった。したがって、脳表面からのSBRは腫瘍自体からのSBRの54%であった。T1-Gd強調MRIにおける脳表面から腫瘍の最外周までの深さは10.6±6.7 mm(0-20)であり、最も深い深さ20 mmの腫瘍は脳表面からも蛍光観察することができた。腫瘍の脳表面からのSBRと脳表面からの深さに対する線形回帰分析は統計学的有意差を認めた(p=0.031)。また、腫瘍からのSBRと6969

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