臨床薬理の進歩 No.44
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脳室近傍に一部造影領域を認めた(図2B、青矢印)。頭蓋内髄膜腫 頭蓋内髄膜腫に対してもSWIG(5.0 mg/kgを手術24時間前に点滴投与)にて術中蛍光診断が可能であった。しかし、前日に投与しなければいけないこと、ICG投与量が安全性上限であることから、安全性と汎用性向上のために、投与条件を投与量と時期を変更し検証した。その結果、蛍光発光を図2 転移性脳腫瘍の症例A)術前MRI Gd造影水平断、B)術後MRI Gd造影水平断、残存病変は青矢印、C)硬膜を翻転し、脳表を観察、D)Cの図において、近赤外線光を照射し腫瘍の蛍光発光を確認、E)明視野。腫瘍摘出中、F)近赤外線蛍光下、腫瘍摘出中、G)明視野。腫瘍摘出後、H)近赤外線蛍光下、腫瘍摘出後。観察する1時間以上前に、0.5 mg/kgを静脈内投与行うことで、髄膜腫からの蛍光発光を観察できることを見い出した。ICG投与後、数分以内に観察し、血流を評価するearly phase、ICG 5.0 mg/kgを手術24時間前に点滴投与を行い腫瘍への貯留を評価するSecond window phaseに対しての観察1時間以上前にICG 0.5 mg/kgを静脈内投与する我々の方法をDelayed window ICG technique(DWIG)と名付けた。 DWIGにて頭蓋内髄膜腫15例(女性11例、男性4例)平均年齢は60歳(28〜81歳)の治療を行った(全摘出:12例、部分摘出:3例)。全例近赤外蛍光により髄膜腫を検出し、その位置を特定することができた。ICG投与から観察までの平均時間は2.1±0.2時間で、15例中12例(80%)は、周囲の脳実質よりも腫瘍の方が強い近赤外蛍光を示した。腫瘍自体からのSBRは3.3±2.6であった。 蛍光発光が陽性の髄膜腫の症例では、NIRによる手術後、残存腫瘍は観察されなかった。さらに、術後MRIでも残存病変は認められなかったことから、ICG蛍光発光によって手術中の残存腫瘍を検出できることが確認された。SBRは、Ki-67(p=0.79)、腫瘍体積(p=0.42)、最大径(p=0.40)など腫瘍に固有のいくつかの変数と有意な相関は認められなかった。血液検査、身体検査、神経学的検査では、ICG投与後3ヶ月間、副作用は認められなかった。 次に、T1BRとSBRの相関を評価した。平均T1BRは2.5±0.9であった。T1BRとSBRの関係を線形回帰分析で評価した。T1BRは図3に示すようにNIR蛍光のSBRと有意な相関があったが(p=0.016)、Ki-67(p=0.28)、腫瘍サイズ(p=0.47)、直径(p=0.27)には認められなかった。 T1BRのメカニズムは血管透過性に影響されると報告されている6)。そこで、DCE perfusion MRIを用いてパラメータKtrans、Kep、Ve、Vpを算出し、透過性とNIR蛍光の関係性を評価した。NIR蛍光のSBRは、Ktrans(p<0.0001)(図4)と有意な正の相関があったが、Kep(p=0.64)、Ve(p=0.30)、Vp(p=0.32)とは相関がなかった。図5にMRI上7171

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