臨床薬理の進歩 No.44
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考  察腫瘍は硬膜の脳側に存在し明視野では確認できないが、近赤外線照射にて硬膜越しに腫瘍からの蛍光発光を確認できた(図6H)。腫瘍摘出中、明視野で確認された腫瘍(図6I)は近赤外線照射にて蛍光発光が確認された(図6J)。肉眼的腫瘍全摘出後(図6K)、近赤外線照射でも蛍光発光する部分はなく、腫瘍の全摘出を確認することができた(図6L)。脊髄神経鞘腫 脊髄神経鞘腫は、DWIGにて7例行った。手術開始時に0.5 mg/kgのICGを投与した。1時間以上後に腫瘍からの蛍光発光を確認した。椎弓切除を行い、硬膜を確認した時点で、近赤外線光を照射したところ、硬膜越しに、腫瘍の蛍光発光を確認することができた。硬膜を切開する前と後の脊髄神経鞘腫の正確な位置が確認され、それにより腫瘍の周囲組織からの剥離、腫瘍切除をすることができた。神経鞘腫の発生母地である神経根から切除する際には、近赤外線光を発光していない部位で切断した。腫瘍摘出後、肉眼的にも全摘を確認し、近赤外線下でも腫瘍の蛍光発光が見られないことを確認し終了した。7例で少ないが、統計解析を行った。腫瘍からの蛍光発光とMRIのT1BRは比例関係を示した。(p=0.0002) 代表的な症例を図7に示す。術前の造影MRIでは第2頸髄(C2)背側に境界明瞭の造影病変を確認した。水平断(図7A)矢状断(図7B)。片側椎弓骨除圧を行い、硬膜を確認した。術前画像では、髄膜腫を予想していたが、硬膜越しに拍動を認めたために、髄膜腫ではなく、神経鞘腫と予想を変え、硬膜切開線を変更した。硬膜を直線切開し、肉眼的に境界明瞭な腫瘍を確認した(図7C、白矢印)。近赤外線を照射して、腫瘍を観察すると、腫瘍が蛍光発光し、正常脊髄との差を確認した(図7D、白矢印)。腫瘍摘出最中、腫瘍は明視野で確認された(図7E)。近赤外線を照射すると境界明瞭な腫瘍からの蛍光発光が確認できた(図7F、白矢印)。腫瘍摘出後、肉眼的には全摘出が観察された(図7G)。近赤外線を照射すると、蛍光発光する部位はなく、腫瘍の全摘出を確認できた(図7H)。なお、術後造影MRI(水平断(図7I)矢状断(図7J))では第2頸髄(C2)背側の造影病変がきれいに消失したことを確認している。 ICGは血液中でアルブミンと結合し肝臓で代謝され、血中および正常組織での除去半減期(t1/2)は3-4分である。血管の手術前・中に動脈、毛細血管、静脈の血流を可視化するため、ICG 25 mgを74AxiAxi図7 脊髄神経鞘腫の症例A)術前MRI Gd造影 水平断、 B)術前MRI Gd造影 矢状断、 C)明視野。硬膜切開後、腫瘍を確認、 D)近赤外線蛍光下、腫瘍局在を確認、 E)明視野。腫瘍摘出中、 F)近赤外線蛍光下、腫瘍摘出中、 G)明視野。腫瘍摘出後、 H)近赤外線蛍光下、腫瘍摘出後、 I) 術後MRI Gd造影 水平断、 J)術後MRI Gd造影 矢状断。SagSag

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