静脈内投与する。ICGは脳腫瘍の患者にも同様に手術中に使用されているが、脳血流を確認するのみ保険適用となっている。 SWIGを用いた近赤外線光の腫瘍に対するこれまでの研究により、その実現可能性と有用性が確認された。MadajewskiやLeeら1,7)によって記述されたSWIGプロトコルは、手術の24時間前にICGの5.0 mg/kgを投与するとされている。しかし、Zehらは、グリオーマの近赤外線蛍光は24時間後ではなく、注入後1時間後にピークを示すと報告している8)。この仮説を検証するために、本研究ではICGを0.5 mg/kg術中に投与し、注入後1時間以上後に観察するDWIGを行った。血管や正常脳実質では蛍光強度が低下した後、腫瘍から蛍光を観察することができた。腫瘍内では排泄が遅れており、EPR効果によるものと考えられる9)。EPRは腫瘍と正常脳実質の間の蛍光強度の差を強める可能性がある。本研究により、DWIG は髄膜腫や脊髄神経鞘腫の近赤外蛍光を正常脳実質、正常脊髄実質と区別するのに十分であることが示された。実際、頭蓋内髄膜腫の平均SBRは既報のSWIG10)のSBRの5.6±1.7に対し、我々のDWIGでは3.3±2.6であった。DWIGのSBRはSWIGのSBRよりも髄膜腫の可視化において若干弱いが、腫瘍と正常脳実質を区別するのに十分であった。さらに、DWIGにおけるICGの低用量は、副作用と負の関係がある。髄膜腫研究の15例では、ICG使用による血液学的および臨床的な副作用は見られなかった。 SWIGでは手術の24時間前に5 mg/kgのICGが投与される。ヒトに対するICGの最大安全投与量は5 mg/kgである。この最大量をSWIGで使用すると、肝臓と腎臓に代謝的な負担がかかる。肝機能障害や腎機能障害などの副作用を避けるため、18歳未満の患者や妊娠中の女性はSWIGの適応とならないようにする必要がある。DWIGでは、これらの副作用は懸念されない。 したがって、DWIGでは、青少年、若年者、高齢者、肝・腎機能障害患者、その他の合併症患者を含む様々な集団における術中リアルタイム画像診断に有用であると考えられる。また、腫瘍の蛍光の可視化を向上させるためには、設定の最適化が必要であるが、顕微鏡を用いたNIRは頭蓋内髄膜腫および硬膜断端の同定に有効であることが示唆された。また、DWIGの手順はSWIGの手順より簡単であることも利点といえる。 頭蓋内腫瘍摘出術では、現在Neuronavigationが普及している。しかし、硬膜を開いた後や腫瘍を摘出する際に、髄液の流出や脳の変形、また脳実質の移動により、腫瘍位置の精度が低下してしまう。術中MRIが可能であれば補えるが、通常の施設にはない。よって再発症例や放射線治療後の症例で、肉眼的に腫瘍局在がわかりにくい場合、また腫瘍摘出中の確認に有用である。このように、近赤外線蛍光法は腫瘍摘出の補助手段として有益であると考えられる。 これまでの研究で、蛍光剤として、フルオレセイン、5-ALA、ICGが現在使用可能であり、5-ALAは神経膠腫、フルオレセインと5-ALAは髄膜腫検出に使用されていることが報告されている。 ICGはEPR効果により腫瘍組織内に受動的に蓄積することで効果を発揮する。ICGによる蛍光造影の利点は、近赤外光領域での組織の自家蛍光が無視できること、低コストであること、脳神経外科領域で手術中の血流モニタリングに使用されてきた長い歴史があることである。ICGの欠点は、受容体特異的な蛍光体ではないこと、非特異的な肝臓への取り込みがあること、ヨウ素アレルギー、肝臓疾患、尿毒症の患者には使用できないことである。 LeeらはSWIGが感度96.4%、特異度38.9%、PPV 71.1%、NPV87.5%であることを報告している10)。今回のDWIGの研究では、感度94%を示したが、特異度は38%に低下した。また、顕微鏡を用いた頭蓋内髄膜腫では、PPVが76%、NPVが75%であり、SWIGとほぼ同じ結果であった。本パイロットスタディにより、顕微鏡を用いた頭蓋内髄膜腫に対するDWIGの有用性が確認できた。75
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