臨床薬理の進歩 No.44
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*1 IWATANI AYAKA *2 MASUTANI SATOSHI *3 FUKUOKA NORIYASU *4 KAWADA KOH *5 MUSHIRODA TAISEI *6 HIKINO KEIKO *7 NAMBA FUMIHIKO はじめに要   旨 未熟児動脈管開存症(patent ductus arteriosus、PDA)は早産児・低出生体重児の主な合併症の一つである。現在国内で行われている内科的標準治療法として、シクロオキシゲナーゼ阻害によりプロスタグランジン合成を抑制するインドメタシンおよびイブプロフェンの静注療法があり、インドメタシンおよびイブプロフェンに不応または禁忌の場合、目的 未熟児動脈管開存症(PDA)に対するアセトアミノフェン静注療法の薬物動態解析を行う。方法 PDAに対して既存薬に不応または禁忌である児を対象に、アセトアミノフェンを投与し、アセトアミノフェンの母集団薬物動態解析を行った。結果 対象9例の分布容積(Vd)、クリアランス(CL)、消失速度定数(ke)、消失半減期(t1/2)(中央値)はそれぞれ、0.544 L/kg、0.034 L/kg/hr、0.062 /hr、11.11 hrであった。CLとkeは、それぞれ血清クレアチニン値(Scr)と尿量と一義的に関係づけられ、CL =−0.0367×Scr+0.1162が導かれた。一方、分布容積に影響する因子は認められなかった。結論 PDAに対するアセトアミノフェン静注療法の薬物動態解析を行った。CLおよびkeは腎機能障害と相関しており、腎機能障害例では血中濃度の上昇が予想された。Scrと体重からアセトアミノフェンの投与量が予測でき、Scrによる投与設計が可能であると考え、現在、前方視的観察研究を実施中である。埼玉医科大学総合医療センター    同   上日本大学薬学部摂南大学薬学部理化学研究所生命医科学研究センター      同   上埼玉医科大学総合医療センター外科的結紮術が考慮される。これら現在利用可能な治療法は、しばしば腎機能障害に代表される重度の有害反応を生じさせる。シクロオキシゲナーゼ阻害薬の代替薬として国外ではアセトアミノフェンが注目され、PDAに対するアセトアミノフェン静注療法の有効性および安全性についての報告が多い。本邦においても、我々は、PDAに対するアセトアミノフェン静注療法の安全性および症候性PDAの手術回避といった有効性を示唆する報告をした1,2)。Key words:アセトアミノフェン、血中濃度、早産児、未熟児動脈管開存症、薬物動態79岩谷 綾香*1 増谷 聡*2 福岡 憲泰*3 河田 興*4莚田 泰誠*5 曳野 圭子*6 難波 文彦*7未熟児動脈管開存症に対するアセトアミノフェン静注療法の薬物動態に関する研究Pharmacokinetics of intravenous paracetamol therapy for patent ductus arteriosus in preterm infants

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