対象と方法しかし、明らかな有害反応なく安全に投与できたものの、未熟児に対するアセトアミノフェン静注療法(15.0 mg/kg/回、1日4回、6時間ごと、3日間(合計12回投与))の薬物動態に関しては報告がない。また、アセトアミノフェンに関する薬理遺伝学研究は表現型を毒性、効果、薬物動態としてなされているものの、まだまだ研究が限られており、エビデンスレベルは低い。薬物動態に関する薬理遺伝学研究では、Sulfotransferase Family 1A Member 1(SULT1A1)、Sulfotransferase Family 1A Member 3(SULT1A3)、Sulfotransferase Family 1A Member 4(SULT1A4)、UDP Glucuronosyltransferase Family 1 Member A Complex Locus(UGT1A)の遺伝子型または変異による代謝酵素活性への影響が報告されているが3〜5)、いずれもin vitro研究であるため、新生児期の実際の血中アセトアミノフェン濃度と絡めた薬理遺伝学研究は新規であり、臨床現場に対する有用性も大きい。今回、我々はPDAに対するアセトアミノフェン静注療法の薬物動態を解明し、薬物動態の個人差に関連する薬理遺伝学的バイオマーカーの同定を目的とした。 アセトアミノフェン血中濃度が高値を示した場合、次回投与量を減量または中止することにより、薬剤による有害事象を回避できる可能性がある。アセトアミノフェンの薬物動態と薬物動態に関連する遺伝子多型を理解することにより、最適な血中濃度および投与方法を決定することができ、この研究成果が社会に還元されることで、将来的に被験者も間接的に利益を受けることができる可能性がある。後方視的観察研究 2017年7月1日から2019年3月31日に埼玉医科大学総合医療センターで、在胎期間23週0日から29週6日に出生した早産児のうちPDAに対して既存薬(インドメタシンまたはイブプロフェン)に不応または禁忌であり、アセトアミノフェン静注薬を投与した児を対象とした。血中濃度は、アセトアミノフェン初回クール終了後、次クール開始前に、アセトアミノフェンキット(フレックスカートリッジ・アセトアミノフェン(N)ACTM、SIEMENS)を用いて測定した。アセトアミノフェン15 mg/kg/回、1日4回、6時間ごと、3日間(合計12回投与)を1クールとした。腎機能障害の評価項目として、尿量[mL/kg/hr]および血清クレアチニン値(Scr)[mg/dL]を測定した。薬物動態解析は、ベイジアン法を用いた母集団薬物動態解析(population pharmacokinetics analysis、PPK)を行った。Allegaert K, et al. Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed. 2004 6)を母集団パラメータとし、1-コンパートメントモデルを使用した。薬物動態パラメータとして、分布容積(volume of distribution、Vd)、クリアランス(total clearance、CL)、消失速度定数(elimination rate constant、ke)、消失半減期(elimination half-life、t1/2)を計算した。前方視的観察研究 既存薬(インドメタシンまたはイブプロフェン)に不応または禁忌である血行動態的有意なPDA合併症例15例を対象とする。アセトアミノフェン静注薬15 mg/kg/回を1日4回、6時間ごとに3日間、15分かけて静脈内投与する。アセトアミノフェン最終投与6時間後および30時間後に通常の血液検査(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase、AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase、ALT)、クレアチニン(creatinine、Cr)、総ビリルビン(total bilirubin、TB))に加えて、約100 µL採血し、アセトアミノフェンキット(フレックスカートリッジ・アセトアミノフェン(N)ACTM、SIEMENS)を用いて血清アセトアミノフェン濃度を測定する。さらに、退院までの通常の採血時に、計2 mLを遺伝子解析用に追加で採取し、理化学研究所にて薬物動態に関連する遺伝子を主な対象として遺伝子解析を行う。80
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