臨床薬理の進歩 No.45
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結  果て行った。滑膜組織を鋏で細切したのち、fetal bovine serum(FBS、1%、シグマアルドリッチ)、collagenase(1 mg/mL、シグマアルドリッチ)およびhyaluronidase(1 mg/mL、シグマアルドリッチ)、deoxyribonuclease I(200 U/mL、シグマアルドリッチ)を含むDMEM 30 mLとともに50 mLの遠心管に入れ、これを37 ℃で90分間穏やかに震盪することで滑膜細胞を単離した。なお滑膜組織の酵素処理は組織の採取から4時間以内に開始した。 単離した細胞はFBS(10%)、L-glutamine(0.1%)および抗生剤を含むDMEMを用いて5% CO2存在下に37 ℃で単層培養により維持し、培養開始から16時間後に培地を本研究用の培養液に切り替えた。さらにその24時間後に上記2で用意された荷重遊離タンパクを含む培養液を用いた。一部の細胞はTGF-βに対するI型受容体の特異的阻害剤であるSB431542(Cell Signaling Technology、アメリカ合衆国ダンバース市)を1μMの濃度で添加した培養液を用いて培養を行った。24時間後に細胞からRNAを抽出してcDNAを合成し、uPA(PLAU)およびplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1、SERPINE1)の発現をβ-actin(ACTB)を内部標準としてqPCR(LightCycler 96 System、Roche Diagnostics、スイス連邦バーゼル市)を用いて調べた。軟骨組織から遊離した活性型TGF-βの定量 軟骨から荷重によって遊離した活性型のTGF-βの量は、TGF-βの活性に応じてsecreted alkaline phosphatase(SEAP)を産生するよう遺伝子改変されたHEK-Blue TGF-βCells(InvivoGen、アメリカ合衆国サンディエゴ市)を用いて計測した。この計測ではHEK-Blue TGF-βCellsを96ウェルプレートに各ウェル5 × 104個の割合で播種し、5% CO2存在下に37 ℃で培養を行った。翌日に培地を本研究用の培養液に交換し、そのさらに24時間後に軟骨からの遊離タンパクあるいは0.01~10 ng/mLまでの濃度のrhTGF-β1(R&D Systems)を含む培養液に交換した。24時間後に培養液を回収し、遠心後、上清20μLを96ウェルプレートの各ウェルに入れた。各ウェルにさらに180μLのQUANTI-Blue Solution(InvivoGen)を加えたのちプレートを37 ℃で30分間インキュベートし、生じた発色の量を吸光度計(iMark、バイオラッド、アメリカ合衆国ハーキュレス市)で計測することでHEK-Blue TGF-βCellsが産生したSEAPの量を求めた。段階希釈したrhTGF-β1を添加した細胞のSEAPの産生量を元に、軟骨組織から荷重によって遊離した活性型のTGF-βの量を推定した。軟骨から遊離したTGF-β1、β2、β3のタンパク量の計測 荷重によって軟骨組織から遊離したTGF-β1、β2、β3のタンパク量をLuminex analyzerを用いて定量した。計測はMagnetic Luminex Performance Assay and Human Luminex Discovery Assay(R&D Systems)およびLuminex 100/200 analyzerを用い、R&D Systemsが定めたプロトコールに従って行われた。なおこの計測では計測直前にSample Activation Kit 1(R&D Systems)を用いて検体のacid activationを行ったのち計測を行った。統計検定 本研究では対応のある二群の比較は対応のあるt検定を用いて行い、三群以上の比較はKruskal-Wallis検定またはFreedman検定を用いて群間の有意性を検定し、群間に有意差があると判断された場合はさらにScheffeの多重比較検定により群間の有意性を調べた。いずれの検定についても有意水準は5%とした。血漿と関節液中のuPAの濃度の比較 同一の症例から関節液検体と同じ日のほぼ同時刻に採取された血漿についてuPAの濃度を計測し、以前計測した関節液中の濃度と比較したところ、関節液には血漿の2倍近い濃度でuPAが存在86

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