臨床薬理の進歩 No.45
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01goL-euav-pdevresbO2-Log10 Expected p-value864l 200468考  察GWAS結果 図2および3に示すマンハッタンプロットとQ-Qプロットでは、インフレーションの証拠は観察されなかった。第6染色体上のHLA遺伝子における遺伝子座が、低ガンマグロブリン血症と有意に関連していた(オッズ比6.5、95%信頼区間3.4-12.7、p値3.1×10-8)。この遺伝子座は、既報におけるネフローゼ症候群において原因遺伝子として報告はされておらず、本有害反応との有意な関連を示していることが考えられた。 本研究では、本邦で初めて、小児期発症特発性ネフローゼ症候群の患者に投与されたリツキシマブによる低ガンマグロブリン血症あるいは無顆粒球症という有害反応を来した患者データベースの構築を行った。全国の施設から、詳細な臨床情報とともに遺伝情報データが蓄積され、重要なリソースとして今後の利用に繋がるものと考えている。次に、本研究ではリツキシマブによる低ガンマグロ図3 リツキシマブによる低ガンマグロブリン血症のゲノムワイドレベルでのマーカーのQQプロット観測されたp値と期待されるp値を示すQ-Qプロット。ラムダGCは、p値をカイ2乗値に変換し算出するため、疾患群と対照群に差がない場合にはp値は正規分布すると推測される。ラムダGC は、GWAS で計算された各SNP のカイ2乗値の中央値を0.456で割った値として示されている。ブリン血症をフェノタイプとした世界初のGWASを行い、HLA領域にゲノムワイドレベルでの有意水準を満たし、かつ、オッズ比も6以上と強い関連性を有するシグナルを同定することができた。 これまで、小児発症のネフローゼ症候群の疾患感受性領域を同定するためのGWASはなされてきており、日本人においても大規模集団での研究が行われてきた。さらには多人種でのメタ解析も行われており、小児ネフローゼ症候群としてのHLAの関与は既に確立しつつある19)。たとえばHLA-DR/DQ領域が有名であり、さらに、NPHS1-KIRREL2やTNFSF15領域においてもゲノムワイドレベルでの有意な関連が示され、replicationコホートでも関連が証明されてきた。しかしながら、有害反応としての低ガンマグロブリン血症におけるHLAの関与についてはこれまでまだ報告がない。本研究で同定された領域は、小児ネフローゼ症候群の原因としても既報がなく、有害反応が独自の自己免疫反応を契機として引き起こされていることが考えられる。 本研究のlimitationとしては、現時点ではまだ目標105105Lambda GC 0.88

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