臨床薬理の進歩 No.45
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結  果クを5μmの切片に切り出し、HE染色または抗体(GATA3、ER、CD10、Ki-67)を用いた免疫組織化学を実施した。全エクソームシークエンス(Whole Exome sequencing、WES) DNeasy Blood & Tissue Kit(Qiagen)を用いて、凍結された患者MLA腫瘍からゲノムDNAを抽出した。WESおよびデータ解析は大阪大学微生物病研究所ゲノム情報研究センター内のバイオインフォマティクスセンターゲノム解析室にて行われた。一塩基多型はMutect2を用いて、アノテーションはAnnovarを用いて行った。フィルタリングとして非翻訳領域を除去したのち、ToMMoデータベース、1000 Genomes Project、gnomAD、esp6500、HGVDで報告されているマイナーアレル頻度(MAF)が0.005未満の同義バリアントを除去した。その後InterVarまたはClinVarにより「病原性の可能性が高い」または「病原性あり」と示されたバリアントを選択した。Patient-Derived Explant(PDE) 既報6,7)を参考にしてPDEモデルで実験を行った。PDX腫瘍を3 mm3に薄切し、24ウェルプレートで培地(10% FBS、0.01 mg/mLヒドロコルチゾン)に浸したゼラチンスポンジ上で薬剤またはコントロールを添加し培養した。薬剤はパクリタキセル、カルボプラチン、トラメチニブ(MEK阻害剤)、オミパリシブ(PI3K/mTOR阻害剤)を用いた。薬剤曝露下に72時間培養後、摘出片を採取、FFPEブロックを作製し、抗Ki-67抗体を用いた免疫組織化学で抗腫瘍効果を評価した。3次元オルガノイド培養 PDX腫瘍を細切後、0.56 U/mL Liberase DHにて37 ℃の水浴中で1時間振盪し酵素処理を行った。その後40μmのフィルターで細胞を濾過した後、マウス由来細胞をMouse Cell Depletion Kitで除去した。PDX腫瘍由来のヒト細胞2500個を96ウェルプレート上のマトリゲルドームにまき、3次元培養用の培地に浸し培養した。72時間ほどコントロールまたは薬剤(パクリタキセル、カルボプラチン、トラメチニブ、オミパリシブ)投与下で培養した後、3次元培養細胞のATPレベルをCell-Titer Glo® Viability assayで計測し抗腫瘍効果を評価した。In vivo PDXマウス実験 前述のように継代したPDXマウスを作製し、週1回の腹部超音波検査で腫瘍体積が100 mm3に達した時点で、マウスをコントロール群(n=5)、カルボプラチン群(n=3、25 mg/kgを週1回腹腔内投与)、トラメチニブ(0.25 mg/kgを週3回腹腔内投与)とオミパリシブ(2 mg/kgを週2回腹腔内投与)の併用群(n=5)の3群に無作為に割り付けた。薬剤投与量は、既報のマウス実験を参考にして忍容性が高い投与量を設定した。PDX腫瘍体積、マウス体重、全身状態を毎週評価した。統計解析 GraphPad Prism 7を用いてone-way ANOVAまたはDunnett multiple comparison testにて行った。p< 0.05を統計的に有意と定義した。 患者由来MLA腫瘍を用いて同所移植を行い、PDXマウスモデルを作製した(図1A-C)。PDX腫瘍は患者MLA腫瘍と組織像が類似しており、共通してGATA3発現陽性、ER発現陰性、CD10発現陽性を示した(図1D)。 患者由来MLA腫瘍のDNAをWESにて解析したところ、11個の「病原性の可能性が高い」または「病原性あり」であるバリアントを同定した。そのうち既に多くのがん種で関連を報告されているものはKRAS(exon2:c.G35T:p.G12V、Allele Frequency 0.714)とPIK3CA(exon2:c.G263A:p.R88Q、Allele Frequency 0.42)の2つであった。 PDEモデル(図2A)において、婦人科がん標準111111

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