AB方 法ゼブラフィッシュ系統を確立し、イソニアジド誘発性肝アポトーシスを視覚化する方法を既に報告している6)。これまでに、我々はin silicoアプローチを使用して公共データベースから多くの化学物質および薬物の中から治療薬候補を同定し、モデル動物や臨床データを活用して新規保護効果の有用性を実証した7)。本研究は以前のドラッグリポジショニングアプローチに従い、イソニアジド誘発性肝障害に対する新規予防薬の探索を行った。In silico解析 公共データベースである、Gene expression omnibus(GEO)8)を用いて、イソニアジド誘発性肝障害により発現が変動する遺伝子シグネチャーを同定した。なお、GSE55489(イソニアジドを3日間投与したBUB/BnJマウス肝臓)、GSE55489(イソニアジドを3日間投与したLGJマウス肝臓)の2種類のデータセットを用いて解析を行った。次に、Connectivity mapを用いて同定した遺伝子シグネチャーに対して逆向きの変化を与える化合物を同定した。そして、FDAの大規模有害事象自発報告データベース(FAERS)(https://www.fda.gov/drugs/questions-and-answers-fdas-adverse-event-reporting-system-faers/fda-adverse-event-reporting-system-faers-latest-quarterly-data-files)を用いて同定した化合物の中からイソニアジド誘発性肝障害のオッズ比を低下させる薬物を同定した。Tgゼブラフィッシュ(Phosphoenolpyruvate carboxykinase 1 (pck1): Casper3GR) 今回用いたゼブラフィッシュの概要を図1に示す。以前に我々が確立した、肝臓にCasper3GRを発現させたTgゼブラフィッシュを用いた6)。Casper3GRはカスパーゼ3で切断されるリンカー配列により、TagRFPとTagGFPが接続された蛍光タンパク質である。この時、蛍光共鳴エネルギー移動:Fluorescence Resonance Energy Transfer(FRET)が起き、GFP励起によりRFPが発生する(赤色が強くなる)。一方で、このリンカー配列は、カスパーゼ3の活性化により切断され、TagRFPとTagGFPの接続が解除される。この時、GFP励起によりGFPが発生する(緑色が強くなる)。ゼブラフィッシュの飼育・管理 Tgゼブラフィッシュは以前に確立された方法に従い維持し、受精卵を採取した。Tgゼブラフィッシュは28.5±0.5 ℃で14/10時間の明暗サイクルで飼育した。ゼブラフィッシュ稚魚は成魚のヘテロ同士を交配させ、ホモ個体を得た。これらは、飼育水:0.3×Danieau's solution(19.3 mM NaCl、0.23 mM KCl、0.13 mM MgSO4、0.2 mM Ca(NO3)2、1.7 mM HEPES、pH 7.2)で、28.5±0.5 ℃のインキュベーター内で飼育した。図1 FRETを用いたゼブラフィッシュ肝臓のアポトーシスの可視化(A)FRETの概要(B)顕微鏡下で肝臓を可視化したTgゼブラフィッシュ画像118
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