臨床薬理の進歩 No.45
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結  果薬剤曝露 受精後4日目のTgゼブラフィッシュ稚魚を6 mMイソニアジドを含む飼育水で24時間インキュベートした。また、6 mMイソニアジドに10μM、 50μMランソプラゾールを含む飼育水にそれぞれ同時曝露し、24時間インキュベートした。薬剤曝露24時間後に、薬物を含まない飼育水でWashし、何も含まない飼育水へ置換した状態で観察に用いた。蛍光顕微鏡を用いたゼブラフィッシュ肝臓のin vivo イメージングによる検証 24時間曝露したTgゼブラフィッシュ稚魚を2-フェノキシエタノール(500 ppm)で麻酔し、スライドガラス上にメチルセルロースを用いて固定した。その後、倒立蛍光顕微鏡を用いて、Wideフィルター(Ex/Em 460-480/567-647 nm)とNarrowフィルター(Ex/Em 460-480/505-530 nm)を用いてゼブラフィッシュ肝臓を観察した。画像解析には、Fijiを用いて蛍光強度を定量化した。肝アポトーシスの定量式は、Narrow / Wideにより算出した。qPCR イソニアジドおよびランソプラゾールを曝露させたゼブラフィッシュ(受精後5日目)からTotal RNAを抽出し、qPCRを行った。Elongation factor 1a(ef1a)をコントロールとし、NF-E2-related factor 2(Nrf2)およびInterleukin-6(IL-6)の遺伝子発現状態を確認するために、各種プライマーを用いてqPCRを行い、特定の遺伝子を増幅した(ABI prism 7300 PCR system)。PCR反応(95 ℃15秒、60 ℃15秒、72 ℃45秒を1サイクルとして、計40サイクル)の条件で行った。臨床データを用いた検証 三重大学医学部附属病院の電子カルテを用いて解析した。対象患者は、2010年4月から2018年4月イスコチン®錠が処方された患者367名を対象とした。20歳未満、処方前より腎機能、肝機能が低下した患者、またデータの欠落した患者は除外した256名を解析対象とした。評価項目は、ランソプラゾール併用群と非併用群の2群間比較を行い、イソニアジド投与前後における肝機能値を比較し、評価した。なお、本研究は三重大学医学部附属病院医学系倫理審査委員会の承認を受け実施した(No.3154)。統計解析 mRNAの発現レベルの比較には、Tukey’s testを用いた。また、2群間比較にはFigher’s Exact testあるいはMann-Whitney検定を用いて、有意水準はp<0.05とした。すべての統計解析には、GraphPad prism ver.9.0を使用して解析した。イソニアジド誘発性肝障害に対する新規保護薬の同定 GEOを用いた解析より、GSE55489(BUBBnJマウス)とGSE55489(LGJマウス)の2つのデータセットにおいて共通して発現が増加する遺伝子数が21種類、発現が低下する遺伝子数が29種類同定された(図2)。これらの同定された遺伝子をイソニアジド誘発性肝障害のシグネチャーとした。次にConnectivity mapを用いてこれらのシグネチャーに対して逆向きの変化を与える化合物を363種類同定した。さらに、FAERSによる解析によって、同定した363種類の化合物の中から、イソニアジド誘発性肝障害のオッズ比を低下させる薬物を解析した。その結果、28種類の薬物が統計的に有意に同定された。Connectivity mapで同定された363種類の化合物とFAERSで同定された28種類の薬物の中で共通する薬物を同定したところ、プロトンポンプ阻害薬であるランソプラゾール、副腎皮質ステロイドであるデキサメタゾン、葉酸拮抗薬であるメトトレキサートが同定された。これらの中で、臨床上安全性が高く、汎用性の高いランソプラゾールを本研究では候補薬とし、検証に用いた。119119

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