表2 イソニアジド投与後における生化学検査値数値は中央値[最小値 - 最大値]で表記。Fisher's exact test or the Mann - Whitney U test。考 察ランソプラゾール併用群 (n=30)27.5 [15 - 179]23.5 [8 - 305]24.0 [10 – 112]0.6 [0.2 – 1.3]222 [100 – 400]201.5 [115 – 309]0.58 [0.38 – 1.1]87.3 [46.6 – 155.3] p値0.0170.0130.3700.0590.1080.7540.2320.184ヒト臨床データを用いた検証結果 表1に、イソニアジド投与前における患者背景の結果を示す。ランソプラゾール併用群では、ランソプラゾール非併用群と比較して、年齢が高かった(71歳 vs 66歳、p=0.043)。また、イソニアジドの投与期間においても、ランソプラゾール併用群の方が非併用群と比較して投与期間が長かった(250日 vs 186日、p=0.040)。その他の患者背景において2群間で有意な差は認められなかった。一方で、イソニアジド投与後における肝機能値を比較したところ、ランソプラゾール併用群では、非併用群と比較して、ASTおよびALTが有意に低いことが明らかとなった(AST: 27.5 vs 34、p=0.017、ALT: 23.5 vs 34、p=0.013)。その他の血液検査の結果において、2群間で有意な差がみとめられる項目はなかった(表2)。 本研究では、in silico解析により、イソニアジド誘発性肝障害に対する新規保護薬としてプロトンポンプ阻害薬であるランソプラゾールを同定した。さらに、Tgゼブラフィッシュおよびヒト臨床データによる解析を用いて、ランソプラゾールの保護効果を検証した。 プロトンポンプ阻害薬は、消化性潰瘍の治療および予防に適応を有しており、幅広く使用されてAST (U/L)ALT (U/L)γ-GTP (U/L)T-Bil (mg/dL)ALP (U/L)LDH (U/L)Scr (mg/dL)eGFR (mL/min)ランソプラゾール非併用群 (n=226)34 [13 - 2424]34 [4 - 1550]30.0 [9 – 551]0.7 [0.2 – 3.6]245 [118 – 2214]202 [96 – 837]0.61 [0.4 – 1.83]79.7 [28.8 – 223] いる9)。これまでにWHOの有害事象自発報告データベースであるVigibaseTMデータベースを用いた研究により、プロトンポンプの併用がイソニアジドによる肝障害の報告を減少させたことが報告されており10)、本研究で用いた新規アプローチ方法においても同様の結果が得られた。 これまでに、イソニアジドは、ゼブラフィッシュの肝臓において酸化ストレスを誘発し、アポトーシス関連因子を増加させることにより肝障害が引き起こされることが報告されている11)。また、ラットの酸化ストレス応答性肝障害および非アルコール性脂肪肝に対して、ランソプラゾールが抗酸化作用により肝臓保護効果を示したことが報告されている12,13)。本研究においても、イソニアジドによりゼブラフィッシュ肝臓における肝アポトーシスレベルが上昇し、ランソプラゾールの同時曝露によりその上昇が抑制され、肝保護効果が示唆された。イソニアジドによる肝障害に対するランソプラゾールの抗酸化メカニズムを解析するために、Nrf2およびIL-6のmRNA発現レベルを調べた。Nrf2は酸化ストレス下では活性化され、多くの抗酸化に関与する遺伝子の転写を促進する。本研究結果では、イソニアジド単独曝露によりNrf2のmRNAレベルが上昇し、ランソプラゾールの併用によりさらに上昇した。一方でランソプラゾールは、イソニアジドによるIL-6の上昇を抑制した。これらの結果より、ランソプラゾールはNrf2を活性化させ、122
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