臨床薬理の進歩 No.45
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胎盤母体血中胎盤関門合胞体性栄養膜細胞胎児血中輸送体胎盤分泌エクソソーム薬物チャネルMHC I母体血中を循環MHC II核酸miRNAmRNAタンパク質脂質二重膜インテグリンされることから、細胞膜上のタンパク質構成を反映している可能性が高い。妊娠時は母体血中におけるエクソソームの存在量が、非妊娠時と比較して、最大で約1,000倍上昇し、特に胎盤組織から分泌されるエクソソームが母体血中に高濃度に存在することが報告されている4)。従って、胎盤輸送機能のサロゲートマーカーとして、胎盤分泌エクソソームの輸送体タンパク質発現に関する情報を利用する戦略は理にかなったものといえる。さらに胎盤組織から分泌されるエクソソームは、体内の様々な細胞に取り込まれることが報告5)されており、胎盤から母体組織への情報伝達を担うと考えられる。 本研究は、仮説「胎盤が分泌し母体血中を循環するエクソソームが、胎盤関門における輸送体発現情報を反映する」(図2)を実証し、胎盤分泌図1 エクソソームの主な構成分子図2 ヒト胎盤関門が分泌するエクソソームにおける輸送体タンパク質発現情報に基づく胎盤関門の薬物輸送機能予測トランスポーター受容体膜タンパク質テトラスパニン(エクソソームマーカー)抗原提示タンパク質接着分子サイズの小胞(細胞外小胞)を循環血液中に分泌し、この細胞外小胞を細胞間の情報伝達に利用している。その中でも、エクソソームは、直径100 nmほどの小胞であり、核酸(miRNAやmRNA)やタンパク質を内包し、その膜上には輸送体(トランスポーター、受容体、チャネル)や、接着分子、抗原提示タンパク質、標的細胞に取り込まれるために必要な膜タンパク質などが発現する(図1)。私たちは、これまでエクソソーム研究を進め、ヒト脳転移性メラノーマ細胞が分泌するエクソソームが、ウイルス受容体を介して血液脳関門を形成する脳血管内皮細胞内に取り込まれることを明らかにしている3)。 エクソソームは、細胞膜上の膜タンパク質を巻き込んだエンドソームの形成が引き金となって分泌134輸送体

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