臨床薬理の進歩 No.45
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*1 MATSUKANE RYOSUKE *2 MINAMI HARUNA *3 SUETSUGU KIMITAKA *4 HIROTA TAKESHI *5 FUJIMORI NAO *6 OGAWA YOSHIHIRO *7 IEIRI ICHIRO cancer cachexia in advanced pancreatic patients松金 良祐*1 南 晴奈*2 末次 王卓*3 廣田 豪*4藤森 尚*5 小川 佳宏*6 家入 一郎*7はじめに要   旨目的 がん悪液質は、腫瘍進展に伴い骨格筋萎縮や食思不振を示す疾患である。アナモレリンは悪液質に適応取得した初の薬剤であるが、膵癌患者のエビデンスは少ない。本研究は進行期膵癌を対象としたアナモレリンの有用性、安全性を評価する前向き観察研究である。方法 治療効果指標を除脂肪体重(lean body mass、LBM)とし、アナモレリン開始前後の治療奏効、有害反応発現を調査した。結果 23名の患者を登録し、アナモレリン内服を1ヶ月以上継続した16名を有効性評価の対象とした。LBMは開始後1、2ヶ月で平均0.9 kg、1.1 kg増加した。一方で効果の個人差は大きく、LBMが維持・増進した奏効患者は56.3%であり、低BMIが奏効のバイオマーカーであった。有害反応である高血糖が36.4%に生じ、インスリン分泌能の低下が、介入を要する高血糖発現を精度良く予測した。結論 膵癌においても臨床試験と同等の治療奏効率が得られたが、高血糖は高頻度で発現した。治療奏効の個人差解明が今後の課題である。九州大学病院 薬剤部  同   上  同   上  同   上九州大学病院 肝臓・膵臓・胆道内科     同   上九州大学病院 薬剤部の最も高い併発率を有することが知られており、膵癌の多くを占める膵管腺癌患者の約90%が診断の時点で体重減少を認め、また約75%が悪液質の定義となる5%以上の体重減少を呈することが知られている2)。またMartinらは、がん患者の体重減少と生命予後の関係性を調査し、癌種を問わず過去6ヶ月間に6 – 11%以上の体重減少を認めた患者では、2.5%未満の患者と比較し9.8ヶ月の予後Key words:膵癌、がん悪液質、アナモレリン、グレリン受容体作用薬、高血糖Prospective observational study of anamorelin for the treatment of  がん悪液質は「通常の栄養サポートでは完全に回復しない進行性の機能障害をもたらす、骨格筋量の持続的な減少を特徴とする多因子性の症候群」と定義され1)、化学療法への抵抗性や忍容性の低下、有害事象の増強など癌患者の予後に多大な影響を及ぼす。多様な癌種の中でも、膵癌はがん悪液質1進行期膵癌患者におけるがん悪液質治療薬アナモレリンの前向き観察研究

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