臨床薬理の進歩 No.45
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謝  辞利益相反いずれの基質の場合も、CYP3A4 .7においてKI値は低下し、また、CYP3A4.18.を除くすべての分子種でkinact,maxは低下した。本研究により、MBI阻害剤の阻害キネティクスは遺伝子変異の影響を受けるが、その影響は結合部位が異なる基質間で類似している可能性が示された。 近年、IVIVEの手法を用いたin silico approachは医薬品開発において注目されている。すなわち、SimcypTM(Certara、UK Ltd)に代表される生理学的母集団薬物動態シミュレーターによる候補化合物の体内動態予測法は、様々な仮想被験者集団を対象に、その物理化学的性質やin vitro代謝実験データ(Km;ミカエリス定数やVmax;最大反応速度)などから、精度よくヒトにおける体内動態をsimulateすることが可能となっている。実際、米国FDA(Food and Drug Administration)においては、医薬品開発における臨床DDI試験の一部の代替法としてその使用が認められている。本報告書においては、英文誌投稿前データについては詳細は記載していないが、本研究結果から得られるMBIパラメータを用いたin silico simulationは、医薬品開発における臨床試験段階での「遺伝的個人差を考慮したDDIのリスク評価」の推進に寄与すると考えられる。さらにそこから得られた情報は、医療現場における「有害事象回避という観点からのテーラーメイド薬物治療の実践」を可能にする。無論、近い将来PMDAが認可すれば本手法を用いたin silico評価により、医薬品開発における大幅な費用削減や省力化、開発失敗の回避に寄与すると考えられる。 本研究の遂行にあたり、ご助成いただきました臨床薬理研究振興財団に深謝いたします。 本研究に際し、開示すべき利益相反はありません。150

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