臨床薬理の進歩 No.45
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はじめに脱コロナ政策について(2021年4月~2023年11月)知念 良顕CHINEN YOSHIAKI 私は2021年4月から2023年11月までの2年半、米国ニューヨークのアルバート・アインシュタイン医科大学へ留学する機会を臨床薬理研究振興財団からいただきました。今ではコロナパンデミックなど遠い昔の出来事のように感じつつありますが、私たちが渡米した時期は、ワクチン接種により重症化を防げることが分かってきて、ソーシャルディスタンスを含めた生活全般の制限を元に戻そうとアメリカ全体が模索していた時期でもありました。このため、留学初期は「本当にやっていけるのか?」という強い不安もありました。しかし、今回の留学は私にとって、単なる観光ではない初めての海外生活であり、たくさんの苦労はあったものの、得られた経験はこれまでの人生観・価値観を大きく変えるような本当に素晴らしいものでした。貴財団の関係者様に厚く御礼申し上げますとともに、留学体験記として自分の経験と研究内容についてご報告したいと存じます。中外製薬株式会社トランスレーショナルリサーチ部門(元:京都府立医科大学附属病院 血液内科)PROFILE2007年 京都府立医科大学医学部医学科卒業2007年 京都府立医科大学医学部附属病院 初期研修医2009年 大津市民病院 内科専攻医2011年 京都府立医科大学院医学研究科 博士課程2015年 京都府立医科大学附属病院 血液・腫瘍内科    病院助教2017年 京都府立医科大学附属病院 血液内科 助教2019年 市立福知山市民病院 血液内科 医長2021年 AlbertEinsteinCollegeofMedicine,DepartmentofCellBiology,Researchfellow2024年 中外製薬株式会社               トランスレーショナルリサーチ部門 私たちが渡米した2021年4月は、まだ各国が水際対策および渡航制限を行っていた時期であり、東京−ニューヨーク間の飛行機の数もかなり制限されていました。出発72時間前にPCR検査を行い、陰性を証明する書類を家族全員分用意する必要がありました。飛行機には私たち家族ほか数名しか乗っておらず、ほぼ貸切状態でした。入国後しばらくは自宅待機が必要で、ラボに顔を出したのは渡米してから2週間後でした。まず始めに、運転免許取得や銀行口座開設のために日本のマイナンバーにあたるソーシャルセキュリティーナンバー(SSN)を獲得する必要がありました。しかしSSN発行窓口は完全予約制で枠数も極めて少なく、予約は電話からのみで、しかもなかなか繋がらないという状況でした。拙い英語でなんとか予約を取り、無事に申請が受理されたときには約2ヶ月が経過していました。住居は日系の代理店を通して探しましたが、ちょうど在宅勤務が浸透してきた時期であり、郊外に住む人が増えて家賃が高騰しはじめている時期でした。子供3人が入居できる物件が1軒だけ残っていたのは本当に幸運161アルバート・アインシュタイン医科大学留学報告

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