臨床薬理の進歩 No.45
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4名(25.0%)、GEM単剤2名 (12.5%)であった。有効性の評価 主要評価項目であるLBM、および副次評価項目である体重のアナモレリン治療開始後3ヶ月間の経時的推移を示す。治療開始後1、2、3ヶ月におけるLBM変化の平均値は、それぞれ+0.9 kg、+1.1 kg、-0.2 kgであった(図1A)。一方で、体重は漸減傾向であった(図1B)。QOL-ACDアンケートにおける食欲関連項目(Q8、Q9)の合計スコアは、全員が維持(5名)もしくは増進(11名)となり、内服開始後1ヶ月で+2.4点(p < 0.01)、2ヶ月で+2.2点(p < 0.01)と有意に増加した(図1C)。痩せに関するQ11(スコアが高いほど痩せに関する自覚が低い)は、内服開始後1ヶ月で+1.2点(p = 0.054)、2ヶ月で+1.3点(p < 0.05)となり有意に改善した(図1D)。また、上記以外の質問項目を含む各質問区分を評価すると、アナモレリン内服後「活動性(Q1-6)」、「社会生活(Q17-21)」は改善が得られなかった一方で、「身体状況(Q7-11)」、「精神・心理状況(Q12-16)」は治療開始後1、2ヶ月で有意な上昇がみられた。総合計スコアは治療開始後1、2ヶ月でそれぞれ+8.8点(p < 0.01)、+11.1点(p < 0.001)と有意な改善を示したが、3ヶ月後では+1.8点まで低下した(図1E-1I)。治療効果の個人差 治療効果の個人差を評価するため、アナモレリン内服後3ヶ月において、LBMの維持・増加を継続した患者を治療応答群(Responder)、一度でも低下した患者を治療不応答群(Non-responder)と定義した。Responderは9名、Non-responderは7名となり、治療奏効率は56.3%であった。Responder群のLBMは治療開始後1ヶ月で+2.7 kg、2ヶ月で+3.9 kgの増加を示し、ResponderとNon-Responderの差は治療開始1ヶ月で4.1 kgとなり有意な差が生じた(図2A)。体重の変化もLBMと同様の経過であった(図2B)。患者背景の比較を表2に示す。年齢、性別、performance status(PS)、治療開始前の体重減少率、Alb、CRP、Hbは両群間で差がなかった一方で、アナモレリン開始時のbody mass index(BMI)はResponderで有意に低かった(Responder:18.4 kg/m2、Non-responder:22.4 kg/m2、p = 0.01)(表2)。治療効果の予測指標として、ROC解析を用いてBMIを評価すると、Area under curve(AUC)0.890、感度85.7%、特異度88.9%、cut-off値は19.9 kg/m2であった(図2C)。QOL-ACDアンケートにおける食欲関連項目(Q8、Q9)の合計スコア、および痩せに関するQ11は、ともにResponderでのみ有意に改善した(図2D、2E)。治療効果の個人差と悪液質関連因子 アナモレリン治療効果の個人差の要因を解明するため、内服開始前後の悪液質関連因子の測定を実施した。アナモレリンは脳下垂体のgrowth hormone (GH) secretagogue receptor type 1a (GHS-R1a)に結合しGHの分泌を促進する。さらにGHは肝臓にてIGF-1の分泌を誘導し、IGF-1が骨格筋に作用することで筋蛋白合成を促す。アナモレリンの薬理作用の中心であるIGF-1をResponder、Non-responderにおいて比較したところ、治療開始前は差がなく(IGF-1中央値、Responder:46.1 ng/mL、Non-responder:47.8 ng/mL)、アナモレリン内服後1ヶ月、3ヶ月における血中IGF-1増加量も両群で差がなかった(図3A)。また食欲関連ホルモンであるghrelin、leptinも有意な差はなく、またアナモレリン内服後1ヶ月においても大きな変動はなかった(図3B、3C)。がん悪液質の促進因子である炎症性サイトカインであるinterleukin(IL)-1β、IL-6、tumor necrosis factor-α(TNF-α)も両群で差はなく、さらにアナモレリン内服後も変動はなかった(図3D、3E、3F)。有害反応の検討:高血糖 アナモレリンの重要な有害反応の1つとして高血糖が存在する。非小細胞肺癌患者を対象とした試験結果から、添付文書における血糖上昇の発現率は4.3 %と記載されているが、膵癌患者における発現率は明らかではなく、本研究で調査を実施した。4

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