臨床薬理の進歩 No.45
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写真3 Dr.Steidlの自宅でバーベキューパーティーの領域では近隣のColumbia大学やNewYorkBloodCenter、MountSinaiHospital、SloanKetteringCancerCenterと定期的に研究会が開催され、論文未発表の最新のデータで議論することができました。アインシュタインでは、MDコースに進むためには高額な授業料が必要ですが、PhDコースの人にはStipendという奨学金(ほぼ給料と同義)が支給され、さらにMedicalScientistTrainingProgram(MSTP)コースの人はStipendをもらいながらPhDとMDの両方の資格を取ることができるというシステムでした。一方で、ラボで働いた経験やテクニックを得るためにボランティア(無給)で働く人も普通にいて、夏休みを利用してPCRや実験マウスの扱いなどを学びにきている高校生もいました。テクニックや経験だけでなく、有名な研究者とのつながりや一緒に働いた経験が学校の成績と同じ程度に重要視されている印象でした。私が在籍していたDr.SteidlラボはCellBiologyとStemCellInstituteという2つの研究部門に属しており、テクニシャンが2〜3人、大学院生は5人(PhDコースが3人、MSTPコースが2人)、ポスドクはインド人が2人、オーストラリア人が1人、日本人が3人という構成でした。ボスのDr.Steidlは私の留学中にCellBiologyのトップとなり、また、2023年にはInternationalSocietyofExperimentalHematologyの学会長もされていて、多忙を極めていました。しかし、「Iamalastfiveminutes’man」と話していたのが印象的で、そういう自虐的なユーモアで場を和ませるのは世界共通なのだなと感じました(写真3)。毎週木曜日の午後1時から午後3時までラボミーティングが開かれ、ラボメンバーの1人が2時間かけて自身の進捗状況を発表し、そのほかのメンバーはボスのポケットマネーから用意されたフリーランチを食べながら発表を聴きます。ミーティングではほぼ全員が発言し、新しい実験の提案や結果の解釈など、毎回すごく白熱した議論が繰り広げられていました。加えて、CellBiologyとStemCellInstituteの全体ミーティングが毎週あり、そこでもフリーランチが振る舞われ、各ラボから2人ずつ30分発表する機会がありました。PhDやポスドクはtraineeと位置付けられ、発表や討論の機会がたくさん与えられますし、人前で自分の意見を述べる経験をできるだけ積ませるというのがアインシュタインの方針のよう163

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