臨床薬理の進歩 No.45
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MdmxTet2KO-MdmxNrasG12D/GFPNrasG12D/GFPMdmxTet2KO-MdmxNrasG12D/GFP + MdmxNrasG12D/GFP + MdmxTet2KO-MdmxTet2KO-Mdmxpppp図1 p53阻害剤を用いた白血病発症マウス(Nras変異遺伝子発現マウスとTet2KO-Mdmx過剰発現マウス)の比較生存曲線かの白血病発症モデルマウスで検討したところ、この薬剤は白血病の発症およびマウスの死亡をプラセボ群と比較して有意に抑制していることが分かりました(図1)。しかし、白血病発症前のクローンだと、どのクローンが将来白血病に進展するかは予想できず、クローン進化というものをどう評価するかという点に難渋しました。一方で、前白血病幹細胞が白血病幹細胞に進展するためには骨髄微小環境が重要であることも明らかとなってきています。マウスの骨髄を別のマウスに移植するためには、レシピエントに放射線を照射して骨髄と免疫にダメージを与える必要があります。この方法では骨髄も同時にダメージを受けるため、骨髄微小環境と白血病幹細胞の関係性がクリアに解析できませんでした。しかし、私の扱っていたtet2変異を有するマウスの造血幹細胞は正常幹細胞と比べて増殖能が高く、放射線照射なしでもレシピエントマウスの骨髄に生着しました。そこで、tet2変異をもち白血病を発症するマウスを用いて前処置なしの状況下で骨髄移植実験を行いました。白血病を発症したマウスの骨髄を別のマウスに移植するとマウスは早期に白血病を発症して死亡しますが、白血病未発症マウスの骨髄細胞は、急激に骨髄中で増殖した後に、ある一定の段階で増殖が止まり、白血病の発症には至らないことが分かりました(図2)。つまり白血病を発症させる異常造血幹細胞の悪性度は、骨髄からのネガティブフィードバックを受けるか受けないかに規定されることが分かりました。私はこの後の解析結果を見ずに今回帰国となってしまいましたが、ラボのメンバーが自分の研究を引き継いで、興味深い結果を出してくれるのを期待しております。165

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