臨床薬理の進歩 No.45
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対象と方法抗がん薬である。カボザンチニブは、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、肝細胞増殖因子受容体(MET)、growth arrest-specific 6(GAS6) 受容体(AXL)等のキナーゼに対する阻害作用を有する。しかしながら、進行腎細胞がんにおいて承認用量の60 mg/日で投与すると、重篤な有害反応が発現して治療の中止や減量に至ることが多い。国内第Ⅱ相臨床試験では、60 mgで開始した場合、91.4%の患者が有害反応によりカボザンチニブが減量され、相対治療強度は43.4%と報告されており、平均1日投与量の中央値は26.0 mg/日であった3)。このように、カボザンチニブの至適投与量の設定は極めて困難な現状がある。そこで本研究では、カボザンチニブのTDMの確立に向けたエビデンスの構築に向けて、血中濃度と治療効果・有害反応の相関性の検証を目的とした。カボザンチニブの至適投与量の設定に有用となれば、寛解率の向上と有害反応の軽減を実現が可能なTDMによる個別化投与法の開発・提供に繋がると考えられる。前方視的観察研究 滋賀医科大学医学部附属病院でカボザンチニブを投与したなかで、本研究への同意を取得できた進行腎細胞がん患者を対象とした。患者の選択基準は、組織学的に腎がんと診断されたこととした。解析対象に係る情報については、電子カルテから収集した。本研究体制、研究内容、実施手順、患者の個人情報の取り扱い、匿名化の方法、研究で取得した情報の安全管理の方法の事項については、滋賀医科大学「人を対象とする医学系研究倫理審査委員会」による承認を得て(R2020-203)、本研究を実施した。なお、本研究に関して筆者の利益相反はない。薬物血中濃度測定 カボザンチニブ投与を開始した次回の外来受診時に、カボザンチニブ服用前のトラフ血中濃度測定のために血液試料2 mLを採取した。カボザンチニブは1日1回20-60 mgを服用し、投与15日目のカボザンチニブ投与を受けた被験者の血液検体から血清を分離した後、カボザンチニブの血中濃度を高速液体クロマトグラフィー(High performance liquid chromatography; HPLC)により測定した。血清はアセトニトリルで除蛋白処理を行った。内標準物質は、エルロチニブを用いた。HPLCの測定条件は、Shim-pack XR-ODS(75 × 3.0 mm inner diameter)カラムを用いて、40 ℃の温度下で、UV 242 nm、流速1 mL/分とした。カボザンチニブ濃度の検出限界濃度は50 mg/mLであった。カボサンチニブによるクロマトグラフについては、血清中に、内標準物質およびカボザンチニブの保持時間付近に妨害ピークはなく、独立したピークが得られた。カボザンチニブの濃度範囲と直線性に関しては、50-3,000 ng/mLの範囲で、相関係数0.997と良好な直線性が得られた。また、カボザンチニブの血中濃度測定における日内・日間変動は、精度<10%であり、定量性および再現性が確認できた。初回採血後も、それ以降の外来診療時にカボザンチニブの血中濃度測定を行い、腫瘍増大となるまで投与を継続した。薬物動態と薬効/有害反応との関連解析 臨床効果の解析として、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)規準による奏効率(最大腫瘍効果としてComplete Response[CR]、あるいはPartial Response[PR]の効果を得た患者の割合)および病勢コントロール率(最大腫瘍効果としてCR、PR、あるいはStable Disease[SD]の効果を得た患者の割合)の評価と、Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) ver. 5.0に基づいた有害反応のgrade別分類を行った。抗腫瘍効果に用いる血中濃度は、患者の全内服期間における平均血中濃度を用いた。有害反応の評価に用いる血中濃度は、各有害反応発症時点を用いた。統計解析にはIBM SPSS ver.29を使用した。カボザンチニブの血中濃度と最大腫瘍効果との関連は、22

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