臨床薬理の進歩 No.45
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総  括謝  辞比べて、本研究における測定値が高値を示した理由として、臨床的寛解後の患者を対象としており、トシリズマブの治療期間が影響している可能性が考えられた。一方で、血清中トシリズマブ濃度は可溶性IL-6受容体濃度と関連しなかった。抗上皮成長因子受容体(EGFR)抗体薬のセツキシマブについて、膜貫通型EGFRから切り離された可溶性EGFRの血清中濃度は薬物血中濃度と関連しなかったことが報告されている11)。トシリズマブは、可溶性及び膜結合型IL-6受容体に結合して消失することから、血清中可溶性IL-6受容体濃度ではトシリズマブ濃度の個人差を説明できないと考えられた。 本研究において、一部の患者で血清中の総IgG値及び可溶性IL-6受容体濃度を評価できておらず、これらの血清中トシリズマブ濃度との関連性については再度検討する予定である。今後は、患者登録の継続の下、関節リウマチの再燃に関連する血清中トシリズマブ濃度のカットオフ値を算出するとともに、その濃度低下の要因を皮下投与時の吸収過程における薬物動態変動の観点から解析する予定である。 以上の結果より、臨床的寛解にある関節リウマチにおいて、皮下投与されたトシリズマブはほとんどの患者において血清中より検出可能で、その濃度は大きな個人差を示した。血清中アルブミン値が低値を示す患者では、血清中トシリズマブ濃度の低下が確認された。 本研究を遂行するのにあたり、研究費の助成をいただきました臨床薬理研究振興財団に深謝いたします。33

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