臨床薬理の進歩 No.45
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追  記謝  辞利益相反コース10)、アミノ酸11)、脂質12)、ビタミン13)など様々な栄養素の吸収障害が、成長遅延と乳児死亡率の上昇を引き起こすことが示されている。しかしながら、著者らが過去に実施したメタボローム解析では、PFIC1モデルマウスの血漿及び腸管上皮細胞において、これらの物質に有意な変化は見られなかった。本表現型の原因究明には、今後の更なる検討が必要である。 現在までにPFIC1に対する治療法は確立されていない。PFIC1では肝移植後にグラフト機能不全を来たすケースが多く、十分な臨床転帰が得られないケースが散見される14,15)。従って、PFIC1に対するコリン補充療法の有効性と安全性を検証する臨床試験を実施し、良好な結果が確認されれば、コリン補充療法はPFIC1に対する新たな治療選択肢となり、本疾患の発症と進行を予防できる可能性がある。また今後、腸管上皮細胞におけるATP8B1の発現、機能の制御に関わる分子機序を解明することにより、ATP8B1の機能障害に起因するPFIC1以外の肝疾患が明らかとなれば、コリン補充療法の適応疾患の拡大が期待できる。 本研究では、母マウスへのCSDの給餌を介してPFIC1モデルマウスへのコリン補充を行ったため、コリン補充療法の臨床開発に先立ち、PFIC1モデルマウスの肝病態に対する塩化コリンの有効用法、用量を決定する必要があり、現在検討を進めている。本データに基づき臨床開発用量・用量を決定し、公知データを収集の上、不足する非臨床データの取得を計画している。 本研究は、Nat Commun誌に発表しました5)。 本研究にご参加いただきました患者様、及びそのご家族の皆様に心より感謝申し上げます。また、研究助成を賜りました公益財団法人臨床薬理研究振興財団に厚く御礼申し上げます。本研究の解析に御協力いただいた、Axcelead Drug Discovery Partners株式会社 安藤智広様、平山愛様、守谷岳郎様、黒沢ちさと様、実験動物の作出に御協力いただいた、筑波大学生命科学 動物資源センター 高橋智先生、水野聖哉先生に感謝申し上げます。患者様の診療情報、生体試料をご提供いただきました国立成育医療研究センター 臓器移植センター 笠原群生先生、阪本靖介先生、福田晃也先生、清水誠一先生、京都大学医学部附属病院 小児外科 岡本竜弥先生、順天堂大学医学部附属順天堂医院 小児科・思春期科 鈴木光幸先生、中野聡先生、済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科 乾あやの先生、宮城県立こども病院 総合診療科・消化器科 虻川大樹先生、山口大学大学院医学系研究科医学専攻 小児科学講座 東良紘先生、津山中央病院 小児科 梶俊策先生にこの場をお借りしまして深謝いたします。また本研究を遂行に御協力いただいた当研究室の大学院生、技術補佐員の方々に感謝いたします。 著者は本研究に関する特許(PCT/JP2022/44650)の発明者です。40

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