臨床薬理の進歩 No.45
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方  法バイオバンクに保管されているULMSの希少な臨床検体を利用して、RNAシーケンス(RNA-seq)とマイクロRNAシーケンス(マイクロRNA-seq)による病態解明を通して、新たな治療標的を同定することを目的としている。臨床検体 2011年から2020年の期間に、国立がん研究センターにて手術を行い、同バイオバンクに保管されているULMS全6例を対象とした。比較対照として、同時期に子宮肉腫が疑われ手術が施行されたが、病理診断にて良性の子宮筋腫(myoma)と診断された3例を抽出した。なお、本研究は、国立がん研究センターの倫理委員会の承認を得ており(No. 2020-160)、すべての症例より書面によるインフォームドコンセントが得られている。次世代シーケンス解析 対象症例の新鮮凍結組織よりmiRNeasy Mini Kit (Qiagen社)を用いて、RNAを抽出した。RNA-seqは、ライブラリー調整およびシーケンスをAzenta社に委託し、DNBSEQ-G400(MGI Tech社)のシーケンサーで配列情報を得た。FASTQファイルよりKallistoソフトウェアを用いて、遺伝子発現を定量し、Rソフトウェアのtximportパッケージ(ver.1.18.0)を用いて、データを統合した。ヒートマップは、gplotsパッケージ(ver.3.1.0)を用いて作成した。発現変動遺伝子の抽出に関して、log2 Fold Changeと補正p値は、DEseq2パッケージ(ver.1.30.0)を用いて算出した。そして、発現変動遺伝子に対しては、IPAソフトウェア(Qiagen社)を用いてパスウェイ解析を行った。 マイクロRNA-seqは、NEBNext Multiplex Small RNA Library Prep Set for Illumina(New England Biolabs社)を用いてライブラリー調整を行い、電気泳動にてマイクロRNAに相当する長さのcDNAを抽出し、MiSeq(Illumina社)のシーケンサーで配列情報を得た。FASTQファイルよりCLC Genomics Workbench(Qiagen社)を用いて、2塩基ミスマッチまで許容してmiRBase21のリファレンスにマッピングした。mRNA-seqの解析と同様に、Rソフトウェアを用いて、ヒートマップ解析でデータを可視化し、ボルケーノプロットを用いて、発現変動マイクロRNAを抽出した。In vitroにおける機能解析 NGS解析およびパスウェイ解析により同定された因子について、細胞株を用いて機能解析を行った。平滑筋肉腫由来の3種類の細胞株(SK-UT-1、SK-LMS-1、SKN)を実験に用いた。まず、96-wellプレートに細胞を播種し、各阻害剤を添加して72時間培養し、CellTiter-Glo 2.0 Cell Viability Assay(Promega)にて生細胞率を測定した。細胞周期解析は、6-wellプレートにおいて各阻害剤で24時間培養し、ReadiDrop Propidium Iodide(Bio-Rad Laboratories)とフローサイトメーターで細胞周期解析を行った。 また、miR-10b-5pの機能解析として、96-wellプレートに細胞を播種し、miR-10b-5p mimicもしくはNegative control(NC)mimicをトランスフェクションして、24時間、48時間、72時間培養した。CellTiter-Glo 2.0 Cell Viability Assay(Promega)にて生細胞率を測定した。さらに、コロニー形成能の評価のため、miR-10b-5p mimicもしくはNegative Control(NC)mimicをトランスフェクションしたSK-LMS-1細胞を6-wellプレートに播種し、6日間培養した。クリスタルバイオレットで染色し、コロニー数をカウントした。動物実験 4週齢のメスのBalb/cヌードマウスを実験に用いた。3.0×106個のSK-UT-1細胞を皮下移植して、モデルマウスを作製した。2週間後より新規治療薬の投与を開始した。PLK1阻害剤であるBI-2536(20 mg/kg)もしくは生理食塩液を週2回計8回腹腔内投与した。もしくは、CHEK1阻害剤で43

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