CD8陽性T細胞肝臓内腫瘍皮下腫瘍制御性T細胞)%(率存生悪増無)%(率存生悪増無)gm量(重瘍腫*I*FM無増悪生存期間抗PD-1無増悪生存期間- + - + 腫瘍重量つながる可能性が示唆された。 ICB療法の臨床的影響が限定的であることを考えると、免疫精密医療として臨床的効果を高めるためには、反応者を層別化するバイオマーカーの開発が不可欠である。我々は、TMEのeTreg細胞によるPD-1発現が治療抵抗性と関連し、場合によってはPD-1遮断療法後に過増悪することを明らかにした12,13)。Treg細胞では、CD8陽性T細胞で観察されたように、PD-L1-PD-1軸はSHP2のリン酸化を介してZAP70およびAKTのリン酸化を抑制した12,13)。したがって、Treg細胞上のPD-L1とPD-1とのライゲーションは、PD-1high Treg細胞の抑制活性を減衰させる。このPD-1high 肺がん(日)皮下腫瘍肝臓内腫瘍肝転移病変なし肝転移病変ありPD-1発現**(日)**考 察図4 各臓器における抗PD-1抗体治療効果野生型マウスの皮下、胸腔内、肝臓内に腫瘍細胞を接種し、浸潤リンパ球の表現型や抗PD-1抗体治療効果を検討した。肝臓腫瘍では腫瘍浸潤制御性T細胞のPD-1発現が高く、抗PD-1抗体治療に奏効しないことが明らかになった(n=4ないし6)。t検定を実施した。Mean±SD。*: p<0.05、ns; not significant。文献 21)より引用、改変。図5 肝転移病変と抗PD-1抗体治療効果の関係肝転移病変を有する胃がん(n=77)、肺がん(n=222)症例では抗PD-1抗体の治療効果が低下した。Kaplan-Meier法、Log-rank検定を実施した。。*: p<0.05、**: p<0.01。文献 21)より引用、改変。抗PD-1抗体治療に抵抗性を示すとともに、hyper progressionに繋がっていると考えられ、本機序の重要性が示された(図4)。 国立がん研究センター中央病院、東病院にて進行胃がんもしくは肺がんがあり、抗PD-1抗体治療を受けた患者さんのデータを後方視的に解析したところ、肝転移病変があると抗PD-1抗体治療の無増悪生存期間が有意に短くなることが示された(図5)。また腎がんでも同様な結果が得られた。肝臓にMC38腫瘍を接種したマウスにMCT1阻害剤を投与したところ、腫瘍浸潤エフェクターT細胞(CD8陽性T細胞)のPD-1発現は上昇する一方で、制御性T細胞のPD-1発現は減弱した(図6)。 MCT1阻害剤を抗PD-1抗体と併用することで、肝臓腫瘍において抗PD-1抗体治療に対する抵抗性を改善でき、新たな治療標的として臨床開発に胃がんCD8陽性T細胞と制御性T細胞のバランスに着眼した新規がん免疫治療戦略への応用53
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