臨床薬理の進歩 No.45
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*1 HASEGAWA HISANORI 東京医科歯科大学統合国際機構、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 膠原病・リウマチ内科学*2 ITAKURA TAKUJI *3 YASUDA SHINSUKE 長谷川 久紀*1  板倉 卓司*2 保田 晋助*3はじめに要   旨目的 多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)患者の免疫細胞プロファイルを解析し、治療戦略に応用する。方法 東京医科歯科大学病院膠原病・リウマチ内科通院中のPM/DM患者の末梢血単核球をフローサイトメトリーで解析し、治療で寛解した患者(寛解群)と再燃した患者(再燃群)との差異を評価した。結果 PM/DM治療前の解析では、再燃群でunswitchedメモリーB細胞と活性化ミエロイド樹状細胞の割合が増加していた。患者の治療前後での解析では、寛解群でCD4+、CD8+エフェクターメモリーT細胞(Tem細胞)の割合の増加、再燃群で古典的単球の割合の増加を認めた。結論 UnswitchedメモリーB細胞や活性化ミエロイド樹状細胞の割合が高い患者、治療後にCD4+、CD8+Tem細胞の割合が増加しない患者や古典的単球の割合が増加する患者では、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン;PSL)増量を要する再燃の予防に、免疫抑制剤の早期導入、2剤併用、変更等による治療戦略の立案が推奨される。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 膠原病・リウマチ内科学                     同   上の主病態はT細胞が担うと推定されている。また、PM/DMには複数の疾患特異的抗体があり、陽性抗体によりPM/DMの臨床像が異なるhetrogeneousな疾患である点や、抗CD20抗体のリツキシマブ(rituximab; RTX)が一部のPM/DM患者に有効な点から5,6)、B細胞の病態への関与も示唆されている。 PM/DMの標準治療は、高用量副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン; PSL)にメトトレキサートやアザチオプリン等の低分子免疫抑制剤併用による病態に非特異的な治療である。初期標準治療後、症状の軽快に伴い、PSLは適宜漸減し、最低量での病勢コントロールを目指すが、PSLは用量依存的に感染症、骨粗鬆症、ステロイド筋症等の副作用を伴い、特に、筋炎患者では、原病による筋力低下Key words:多発性筋炎/皮膚筋炎、治療抵抗性、寛解と再燃、フローサイトメトリー、免疫細胞プロファイルDetecting characteristic immune phenotype of polymyositis and dermatomyositis patients responding or relapsing to immunosuppressant therapy 多発性筋炎/皮膚筋炎(polymyositis; PM/ dermatomyositis; DM)は、慢性進行性に近位筋優位の筋痛と筋力低下を呈する全身性自己免疫疾患であり、DMは加えて典型的な皮膚症状を有する。四肢筋力低下による日常生活動作の低下に加え、患者は、嚥下筋傷害による誤嚥性肺炎や、本疾患の肺症状である間質性肺炎(interstitial pneumonia; IP)に予後を左右される。PM/DMの病態は完全には解明されていないが、筋生検病変においてT細胞やマクロファージの浸潤を認め、T細胞の活性化を抑制するカルシニューリン阻害薬がPM/DMに対し有効な点やその他複数の研究から1〜4)、筋傷害57多発性筋炎/皮膚筋炎患者の免疫細胞プロファイル解析による治療奏効群と治療抵抗性群の特徴的な免疫フェノタイプの抽出と治療への応用

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