臨床薬理研究振興財団30年のあゆみ
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J APAN RESEARCH FOUNDATION熊本大学 名誉教授北海道医療大学 学長司会 松田 一郎●記念講演京都大学大学院薬学研究科ゲノム創薬科学分野 教授演者 辻本 豪三■■■ はじめに ■■■松田先生、過分なご紹介ありがとうございました。今ご紹介いただきました京都大学の辻本です。本日は財団設立30周年記念の記念講演ということで、大変気後れしておりますが、本当におめでとうございます。関係者の皆さんにも御礼申し上げます。■■■ 臨床薬理の重要性 ■■■臨床薬理研究振興財団には2度目の米国留学時に大変お世話になりました。最初の留学の時、スタンフォード大学で学びましたのは、生化学、あるいは基本的な薬理学の研究でした。また、週に1回臨床薬理のところに属していましたので、特に高血圧、循環器のフェローということで、ラウンドをし患者さんのコンサルテーションを受けるというようなことをやったのですが、ほとんどbasic researchばかりをやっていました。その後、分子生物学が非常に勃興してきて、薬理学をやるにしても、分子生物学なしでは今後発展がないと考え, 山梨医科大学の橋本敬太郎教授にお願いし、約10ヵ月間行かせていただきました。その折、臨床薬理研究振興財団からサポートを頂きました。この財団が設立された時の経緯を, 鈴木理事長が書かれていますように「新薬の開発および薬物療法に重要な役割を果たす臨床薬理学が日本の大学教育制度の中で1つの学問大系として育っておらず、先進諸外国に比べて大変遅れている」という認識のもとでこの会を設立された、と聞き及んでいます。非常に慧眼であったと私は思います。日本でも臨床薬理の重要性は認知され始め、臨床薬理の講座がぽつぽつ出始めた頃でしたが、まだまだ薬理との境界線というのがなかなかできていません。先ほどのいろいろな先生方のお話にもありましたように、臨床へのかけ渡しがなかなかないという状況だったかと思います。私もMSDインターナショナル・フェローシップで、先ほど述べました臨床薬理を学びに米国スタンフォード大学に行ったのですが、臨床薬理というものが、学問ではありますが、非常に identityをもってなかなか成立することが米国でも難しかったのではないかと思います。各科のfundamentalなところを支えるようなものになっていったのではないかと思います。その中で、この財団が今後占める方向性を与えるといいますか、役割はますます大きくなってきているのではないかと思います。いろいろとまだまだ私なりには臨床薬理に関してお話ししたいこともありますが、私はどちらかというと基礎研究の方にそのあと向かっていったので、今日のこのような会で「臨床薬理学の今後のあるべき姿」な20 30年のあゆみ ー 30周年記念 行事/記念講演 ゲノム時代の臨床薬物治療学と創薬 ー30周年記念 行事/記念講演 FOR CLINICAL PHARMACOLOGY─ ゲノム時代の臨床薬物治療学と創薬 ─

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