J APAN RESEARCH FOUNDATIONJ APAN RESEARCH FOUNDATION図2 GPR120受容体の発見わけですが、今やその標的の方をむしろ知ったわけです。どの標的がどういう病気に関係するのか? あるいは、どのような分子をターゲットにすれば、どういう病気を克服できるかというような状況に今陥っているのではないかと思います。また、いわゆるテーラーメイド医療を完成させる意味でも、ゲノム創薬が非常に重要視されてきています。ゲノム創薬は、ゲノムの情報とかテクノロジーを用いて薬物の開発を促進、あるいはいろいろな標的になるべきものをrationalに抽出してくるといったようなところにキーポイントがあります。また、従来のchemistry fi rstのオーソドックスな創薬からbiologyがfi rstのゲノム創薬、そういうパラダイムシフトがゲノム創薬という言葉で象徴されることではないかと思っております。ゲノム創薬、先ほどから哲学的なことばかり言っていても仕方ありませんので、もう少し具体的な、私どもの研究も交えましてお話しさせていただきます。ゲノム創薬の標的疾患ですが、糖尿病とか、肥満、炎症、ガンといった多因子性疾患がその標的です。実際にいろいろな取り組みが、新しい薬を作るという意味ではなされております。1つは、これから述べますオーファンの受容体のligandを探索するということ、あるいはDNAチップ等を使って、いろいろな疾患の情報を、このDNAチップの発現情報の方から抽出してくる、この実際をご紹介させていただきたいと思います。1つ目は、糖尿病、肥満の治療薬の標的になるのではないかという遺伝子、受容体ですが、GPR120というものを発見しました(図2)。先ほど申しましたように、全世界で売られている薬物のこの標的となる分子は、高々500ぐらいです。483というのは2000年時の値ですから、そのあと少し増えて、現在500を超えていると考えられると思います。その500ぐらいの分子の中で、今日お話しするG蛋白質と共役する受容体(GPCR)は、約45%を占めております。皆さん、毎日のように使っているβ-blockerとか、α1のblocker、最近は高血圧ではなくて前立腺肥大症の方で有名ですが、α1のblockerですとか、あるいはH2 receptor、アンジオテンシンIIのreceptor、エンドセリン、すべてこのGPCRに属する7回膜貫通型の受容体という特徴的な構造を持った受容体です。これが、なんと売上の6割を占めるということで、標的としては45%ですが、24 30年のあゆみ ー 30周年記念 行事/記念講演 ゲノム時代の臨床薬物治療学と創薬 ー FOR CLINICAL PHARMACOLOGY FOR CLINICAL PHARMACOLOGY
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