臨床薬理研究振興財団30年のあゆみ
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J APAN RESEARCH FOUNDATIONJ APAN RESEARCH FOUNDATIONめます。我々は実験動物モデルを幾種類か解析し、その中で抽出された限られた候補遺伝子群について患者さんのご協力を得て、例えば免疫染色とか、あるいはRT-PCRで、本当にそれがヒトの疾患でも同じような挙動を示すかということを検証し、新たな腎炎治療候補分子を発見しました(図3)。すなわち、IgA腎症のモデルマウスとか、あるいは anti-GBMのモデルとか、 Thy1といった非常によく確立された動物モデルを用い、チップ解析し、CK2という蛋白リン酸化酵素を我々は絞り出したわけです。ubiquitousに存在しますが、腎炎のとき糸球体に爆発的に増えてきます。動物モデルでもそうですし、女子医大の腎センターの先生方のご協力を得て解析したところ、 IgA腎症の患者さん、あるいはループス腎炎の患者さんの腎臓で爆発的に増えていました。さらに、天然物の inhibitorやantisense DNAを使っても腎炎の症状が非常にきれいに抑えられ腎機能も改善を示しました。私たちとしては今腎炎の治療薬の標的として、この先を進めているところです。この例のように、実験動物モデルなどを介して、図3 Discovery of Novel Drug Targets:DNA Chipある程度絞られた candidateについて、今申しましたRNAiとか、antisenseのDNAとか、あるいは低分子化合物のそれと特異的に反応するようなものがあれば、それを用いて validationして、そしてターゲットとして成立させるというような流れを今考えてます。結論ですが、現在各種のゲノムテクノロジーのプラットホームがあり、データベースがあります。それらを最終的なdrug discoveryとか、molecular medicineといったようなところにもっていくには、biomedical informaticsが非常に重要です。現在は情報過多の状態です。その中から、ある論理をもって抽出してくる、あるいはそれを医療につないでいく、そのための教育が非常に重要ではないかということで、京都大学の方では今21世紀のCOEの援助によりまして、薬学教育の中でも特に情報科学といったものを強化しています。■■■ 結 論 ■■■PNAS, 102:7736-7741, 200526 30年のあゆみ ー 30周年記念 行事/記念講演 ゲノム時代の臨床薬物治療学と創薬 ー FOR CLINICAL PHARMACOLOGY FOR CLINICAL PHARMACOLOGY

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