臨床薬理研究振興財団30年のあゆみ
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J APAN RESEARCH FOUNDATIONいかと思います。内容は慢性骨髄性白血病に対して、イマチニブが使われていますが、ご存じの通りこれは分子標的薬の代表みたいなもので非常によく効きますが副作用も強いわけです。これを慢性骨髄性白血病に使うと、確かに検査値はよくなってくるんですが、白血病細胞を分化度に応じて数を勘定していきますと、その減り方に一つの数学的なモデルが出来上がるんです。そういうふうなことを臨床で地道に研究していくと、分子標的薬ですから分化した細胞には標的があるけれども、未分化の細胞には標的がないため、白血病幹細胞が生き残っており、それを殺さずに治療をやめたりすると、今度は猛烈な速さで幹細胞が分裂しますから、突然変異が起こって薬物耐性細胞が増殖して、治療に失敗することになります。これらを病態の側から薬物動態と同じように解析してやれば、現時点で考えられる理想的なPK/PD治海老原 今日は山村先生に来ていただいていますが、山村先生は古くから臨床薬理学に関心をもたれて、その発展に大きな役割を果たして来られました。先生は麻酔科医で、日本の麻酔学の創始者でもありますが、麻酔学というと麻酔薬、筋弛緩薬など、薬が大きな役割を果たす領域です。山村先生は臨床薬理学に関し、学会発表、あるいは座長などで貢献してくださったとともに、新しい麻酔薬、あるいは筋弛緩薬などの開発にも大変ご尽力くださった方です。山村先生には麻酔学と臨床薬理学との関わりや、臨床薬理学会の初期の頃のお話をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。療ができるようになってくるのではないかと思います。このような研究が日本の臨床薬理研究者の研究成果の中から続々と出てくれば、エビデンスができてくるのだと思います。海老原 ありがとうございました。岡先生は、先ほどお話があったように、1980年に臨床薬理学会にお入りになったということですが、1980年というと臨床薬理学会が発足した年ですね。岡 はい、その直後です。それまでは臨床薬理学というものがあるということも知らなかったんです。海老原 そうでしたか。今お話があったように、その頃は、臨床薬理学という言葉は岡先生ばかりではなく、知らない人が多かったと思います。外国でもそんなに古い言葉ではないんですけれども、日本ではその頃から使われるようになった言葉なのです。山村 私は、今ご紹介にあずかりましたように麻酔が専門ですけれども、麻酔はそもそも臨床薬理であり、臨床生理であるといわれています。1950年に日米医学教育者協議会ができて、アメリカの麻酔の教授が日本に来て講義した時に、その■■■ 麻酔と臨床薬理 ■■■山村 氏34 30年のあゆみ ー 30周年記念 座談会 薬物治療の進歩と臨床薬理学 ー日本における臨床薬理学の歴史 FOR CLINICAL PHARMACOLOGY

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