臨床薬理研究振興財団30年のあゆみ
39/124

臨床薬理研究振興財団ー 30周年記念 座談会 薬物治療の進歩と臨床薬理学 ー 30年のあゆみ 35時始めて「臨床薬理」といわれて、なるほど、そういえば、麻酔薬というのは、ヒトに使って、薬理学的効果で麻酔するわけですから、自分たちもそういう意味では、実際上は臨床薬理的な研究をしていたのだと思いました。今、岡先生がいわれたように、pharmacokineticsあるいは血中濃度というようなことが、最近非常に問題になっていますが、麻酔薬の場合には、薬の血中濃度を直接測るのは難しいんですが、吸気中の薬の濃度と呼気中の薬の濃度を測定して、一応pharmacokineticsのような研究はしていまして、麻酔薬は濃度でなくて分圧で麻酔が効くんだということで研究をしていました。■■■ 臨床薬理研究会の発足 ■■■山村 1969年には臨床薬理研究会というのが発足しましたが、私はあまり関心がありませんでした。それは、内科医たちの薬の研究もヒトに使った研究をしているし、今さら臨床薬理といってもどうなのかなと思ったからなんです。ですから、私は積極的には世話人などにはならなかったんですが、砂原茂一先生、それから実験動物中央研究所にいた柳田知司先生などが世話人になって発足したようですね。その時の砂原先生の趣旨を読んでみますと、動物実験による薬理学的な知識をすぐヒトに当てはめるわけにはいかない。改めてヒトの薬理学、治療学を確立しなければならない。それから新薬の臨床研究というのは、厚生省の申請書類を整えるために会社から頼まれて仕方なしに片手間でやっていたような仕事だが、そんなことではだめで、正しい実験計画に基づいた試験で薬剤の臨床評価をしなければいけない。そういう意味で始めたということが書かれています。その頃だと思いますが、砂原先生が結核のイソニアジドの血中濃度が、外国人と日本人では大きく違い、日本人の方が分解が早いというようなことで、日本人に使う薬は日本人で臨床試験をやらなければいけないというようなことをいわれました。そんなことでこの研究会ができたのではないかと思います。それで、第1回を1970年に野口記念館でやって、この時は演題数が12とほんのわずかで、その演題をみますと、ラットを使った研究などもあって、臨床薬理研究会といっても動物実験的な研究が多くて、あまり臨床的なものはなかったようです。その次の年、1971年に第2回が開催されましたが、この時も演題数は11という、ごくわずかな数でした。ただ、第1回の臨床薬理研究会発足と同時に『臨床薬理』という雑誌が発刊されています。これは非常によかったと思います。1971年の時の一般会員が253名です。そのうちで医者、薬剤師などは74名で、253名のうち製薬会社の社員が74名ということで1/3ぐらいは製薬会社でした。その後1969年から1979年までこれが続いているわけですが、発足してから6年経った1975年には、日本「臨床薬理」創刊号財団法人

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る