臨床薬理研究振興財団30年のあゆみ
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J APAN RESEARCH FOUNDATION製薬工業協会の後援で海外研修員制度ができまして、それで海外に研修員を送る。同じ年に、第一製薬の創業60周年を記念して臨床薬理研究振興財団が生まれました。それで、臨床薬理研究会のことについては、私も、初めはあまり出ていなくて、後半に時々顔は出していましたが、それ以上詳しいことは知らないのです。名簿を見ますと、中野先生はもう会員になっていたようですが、何かそのへんの思い出をお話しください。中野 第1回の臨床薬理研究会から出席しています。ちょうど私が九州大学医学部の心療内科の大学院を終わって、同じ九大薬学部の薬品作用学(現薬理学)講座の研究生になった年に、臨床薬理研究会が発足しました。私は、臨床もしているし、基礎薬理も勉強していたので、丁度自分に適した研究会が出来たように思いました。今山村先生がいわれた通りで、当時の研究発表はほとんどが動物のデータでした。私は第2回目の研究会から継続して人間を対象にした 臨床薬理学のデータを発表していましたが、ヒトを扱っている研究は非常に少ない時代でした。■■■日本臨床薬理学会海外研修員制度■■■海老原 中野先生は、先ほど山村先生がお話しになった海外研修員制度の第1回生でしたね。中野 そうです。海老原 何年でしたか。中野 1975年に始まり、1977年まで、2年間米国スタンフォード大学に留学させてもらいました。海老原 そうですか、この財団の設立の頃ですよね。山村 海外研修員制度は、私も選考委員になりました。柳田先生に頼まれて、私は小林真一先生を試験したんですよ。海外へ行くんだったら英語ができなきゃだめということで英会話の試験を提案したらその試験官を押し付けられて、それで病院に来てもらって英語の会話の試験をしました。試験といっても大した内容ではないですけど。その時、受験したのが小林真一先生でした。このことを、後から、小林先生にいわれましてね。私は先生の試験を受けたんですよと。■■■砂原茂一先生のこと■■■海老原 先ほど山村先生からもお話がありましたが、初めから日本臨床薬理学会の設立、あるいは発展のために尽力された砂原茂一先生は、国立療養所東京病院の院長をなさっていたんですが、日本における臨床薬理学の導入にはずいぶん熱心でした。山村先生がおっしゃっていましたが、動物実験の成績だけで薬をヒトに使うのは倫理的にも問題があり、ヒトで使う薬なんだからヒトで試さなきゃだめだと。倫理的問題は非常に難しいが、そうしなければだめだと強くいっておられました。私は親しくしていただいて、いろいろ身近で教わったものですから、あの先生の考え方について共鳴して勉強しました。中野 氏先ほど山村先生がおっしゃったイソニアジドの代謝は、外国でもかなり注目していてやっていたんですけれども、その有効性、あるいは副作用の出現などは、人種差もかなりあるのではないかということで、日本人は欧米人に比べてrapidというか、extensiveなmetabolizerが多いんだというようなことを砂原先生が発表したんです。これも世界的な仕事ですけれどもね。36 30年のあゆみ ー 30周年記念 座談会 薬物治療の進歩と臨床薬理学 ー FOR CLINICAL PHARMACOLOGY

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