臨床薬理研究振興財団40年のあゆみ
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Japan Research Foundation for Clinical Pharmacology国立大学法人 北海道大学 名誉教授公益財団法人 臨床薬理研究振興財団 評議員北畠 顕1740周年に寄せて 当財団が設立された1976年は奇しくも私が日本臨床薬理学会の第2回海外研修員として、大阪大学医学部第一内科研究室から阿部裕教授のご推挙により米国Maryland大学社会予防医学科(C. R. Klimt教授主宰)に留学した年です。この留学が私の臨床薬理学との係わりの契機となりました。当時臨床薬理学講座を持つ大学は自治医科大学のみで、私も学生時代に臨床薬理学の講義を受けたこともなくMelmonの成書を勉強するくらいで、全くのゼロからのスタートでした。Klimt研はUGDP, CDP, AMIS, PARISなど多施設共同大規模臨床試験のco-ordinating centerとしで世界的に知られていました。大規模臨床試験の実際を目の当たりにして只々驚くばかりでした。また、Klimt教授の勧めでJohns Hopkins School of Hygiene and Public Healthで実習を中心にした生物統計学と疫学のコースを取り、有意義な経験をしました。一年間の研修を終え、1977年に帰国し母教室に復職しました。以後、日本臨床薬理学会の評議員、理事など務めさせて頂き、水島裕理事長時代には日本医学会加盟に努めました。現在、同助成による留学経験者は80名を超え、多くは学会の発展に尽力されています。 当財団の評議員は平成8年より今日まで務めさせて頂いています。在職期間の割には財団への貢献度が少なく申し訳なく思っています。唯一、平成17年・18年の2年間研究助成の選考委員を仰せつかりました。選考委員としては平均百数十台の応募演題から約20題を選びますが、評価基準を一定に保つために自分なりに工夫して、余り日を置かずに一気に採点した記憶があります。また財団では海外研修の助成事業も学会と同時期に始めて居られ、延べ200名を超えています。ただ、学会と財団からの留学経験者間に懇親や情報交換の場が少なく、更なる連携が望まれます。 最近、STAP問題や臨床試験の研究不正が社会的にも大きな問題になりました。対応策として、データ管理やモニタリング制度などが見直されています。しかし、いくら制度的に厳格化しても問題が解消されるとは思えません。臨床研究の結果のヒトに及ぼす影響の大きさを自覚し研究倫理を自己確立することが肝要と存じます。また、最近は国際的共同試験が珍しくなくなり日本からも多くの研究者が参画されています。是非とも、臨床薬理学を志す人は臨床の専門領域でも指導的な立場を目指して頂きたいと願っています。財団設立40周年を祝して-若い研究者へのメッセージ40年のあゆみ

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